スプリングスティーン伝説の宅録『ネブラスカ』と、映画『孤独のハイウェイ』に通底する「なんだ、これ?」感とは
Born to Run but Stumbles Halfway
主役のホワイトは単なる物まねではない情熱的な歌声と演技を披露しているが ©2025 20TH CENTURY STUDIOS
<ロック史に刻まれる名盤『ネブラスカ』と、その誕生を描く伝記映画。どちらにも「違和感」があるが、その意味合いは異なっている──(レビュー)>
1982年の発表当時、ブルース・スプリングスティーンの6枚目のアルバム『ネブラスカ』は、多くのファンに嫌われたはずだ。
73年にデビューして以来、スプリングスティーンは社会的テーマや並外れたバックバンド、素晴らしいライブによって熱狂的支持者を獲得し続けていた。
80年には、初めてビルボードチャートでトップ10入りしたシングル「ハングリー・ハート」を送り出し、新たなファンも増えていた。
そんなロックスターが地元ニュージャージー州で、文字どおり「宅録」した作品を発表したのだ。
第2次大戦前のカントリー・ブルースのような響きを持つ『ネブラスカ』に収められたのは、ギャンブラーや殺人者や放浪者についての歌で、当初はデモテープとして録音したものだった。
しかも、シングルカットもツアーもなく、取材も受けなかった。アルバムカバーには本人の顔もない。米音楽評論家のグレイル・マーカスが、ボブ・ディランの作品『セルフ・ポートレート』について発言したように、「なんだ、これ?」とぼやいたファンは少なくなかっただろう。
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