スプリングスティーン伝説の宅録『ネブラスカ』と、映画『孤独のハイウェイ』に通底する「なんだ、これ?」感とは
Born to Run but Stumbles Halfway

実際、『ネブラスカ』が好きでない人は今も多いに違いない。
死の影が色濃く、音の悪い同作より、明るく高揚感のあるアルバム『明日なき暴走』(75年、原題:Born to Run)や『ボーン・イン・ザ・USA』(84年)のほうが好きなのは理解できる。
だが『ネブラスカ』はもはや伝説の一部だ。スプリングスティーン作品のうち、おそらく最も評価が高く、ある意味で最も影響力が大きい。
スコット・クーパー監督の伝記映画『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』(原題:Springsteen Deliver Me from Nowhere)は、そんなアルバムの制作過程を描く。この映画について言える最大の悪口は、絶賛する人も酷評する人もいると思えないということだ。
アーティストの心の中で起きる転換を、映画として表現するという不可能に近い挑戦をしたことは評価できる。自室で録音する男が主人公の映画を作るのは大胆な試みだ。
とはいえ勇気を感じるのはそこだけで、内容にも形式にも思い切ったところはない。





