Picture Power

【写真特集】分断の街ニューヨークの分断された視点

THE POLARIZED CITY

Photographs by Q.SAKAMAKI

2020年10月30日(金)18時20分

【外交】アメリカ国連代表部の正面に飾られたドナルド・トランプ大統領の肖像写真。通りを挟んで反対側にある国連本部前に掲げられた加盟国の国旗がガラスに映る(本文文末に続く)

<さまざまな課題に対するアメリカ市民の見解は、保守かリベラルかの2つのイデオロギーによって両極化してしまった>

高級ブティックや百貨店が立ち並ぶニューヨーク5番街。豪奢なショーウインドーやブランド品は世界中から訪れる人々を魅了してきた。ところが大統領選挙を11月3日に控えた最近は、営業不振のために休業や撤退を余儀なくされた店舗が目立つ。店は傷だらけの合板で覆われ、露天商が偽のブランド品を売っている。

この光景を、両大統領候補の支持者たちは全く異なる視点で見ている。共和党側は「リベラルな州知事らによる過剰な新型コロナウイルス対策が原因」と捉え、民主党側は「保守派トランプ政権の経済政策の失敗」と呼び、お互いを罵り合う。

外交、治安、公衆衛生などのさまざまな課題に対する市民たちの見解は、保守かリベラルかの2つのイデオロギーによって両極化している。見解が大きく乖離した者同士の議論は成立せず、選挙戦の中で対立だけが深まっている。

結果はどうあれ、選挙後に双方が歩み寄りを目指すことなどあり得ない状況だ。修復が困難なところまで進んだ分断社会を、癒やす方法はあるのだろうか。

(冒頭写真キャプションの続き)
<共和党支持者の視点>自国第1主義。国際協調路線に背を向け、気候変動対策やイラン核合意などの国際的枠組みからは離脱。アメリカの利益にならない国連は軽視して当然
<民主党支持者の視点>多国間主義。トランプは同盟国やパートナーを正当に扱わず、時に見捨ててきた。アメリカ主導の国際協調を復活させ、権威主義的国家の台頭を止めるべきだ

ppny02.jpg【経済】再開発計画が滞るニューヨークの目抜き通りの五番街で、偽のブランドバッグを売る露天商
<共和党支持者>民主党の州知事や市長などによる行き過ぎた新型コロナ対策が景気後退の原因。コロナ禍初期に米国株は一時大幅下落したが、8月には過去最高値を更新している。経済の先行きは明るい
<民主党支持者>トランプ政権の経済政策の失敗が原因。コロナ禍への初期対応の誤りが経済に冷や水を浴びせた。株高も実体経済を反映しておらず、大半のアメリカ人には恩恵がない。持つ者と持たざる者の格差は広がるばかり


ppny03.jpg【警察】BLM(ブラック・ライブズ・マター=黒人の命は大事)運動を警備するニューヨーク市警察
<共和党支持者>「法と秩序」を維持するために警察力は欠かせない。リベラル派の警察への反発は行き過ぎで、経費削減をしたら市民を守れない。社会秩序は崩壊し、犯罪が蔓延するだろう
<民主党支持者>警察機構の中に潜む暴力、差別主義を認識し、組織変革や警官の再教育が必要だ。場合によっては経費削減も選択肢の1つ。共和党は選挙のために社会不安を利用している


ppny04.jpg【人種差別】黒人たちへの暴力や差別に抗議するBLMのデモ
<共和党支持者>BLMは人種間の断絶をあおる運動で、参加者は差別主義者の集まりだ。警察に殺された人数は、黒人よりも白人のほうが多い
<民主党支持者>人口比では白人よりも黒人のほうが2倍以上の割合で警察に殺されている。BLMの参加者は20~30代の白人が圧倒的に多く、人種を超えた基本的人権の擁護を訴える運動だ


ppny05.jpg【公衆衛生】新型コロナ対策のために、マスク着用が義務付けられているニューヨークの地下鉄
<共和党支持者>マスクは個人の自由を束縛している。新型コロナの死亡率はさほど高くないから、マスクの必要性は感じない。トランプ自身も感染から短期間で復活した。経済や社会活動の早期完全再開を求める
<民主党支持者>マスクは自分自身と家族、他者の命を守るもの。新型コロナは現在最も真剣に立ち向かうべき問題だ。ソーシャルディスタンス(社会的距離)を保ち、経済や社会活動の完全再開は慎重を期したい

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ネクスペリア中国部門「在庫十分」、親会社のウエハー

ワールド

トランプ氏、ナイジェリアでの軍事行動を警告 キリス

ワールド

シリア暫定大統領、ワシントンを訪問へ=米特使

ビジネス

伝統的に好調な11月入り、130社が決算発表へ=今
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「今年注目の旅行先」、1位は米ビッグスカイ
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 5
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    自重筋トレの王者「マッスルアップ」とは?...瞬発力…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 10
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story