コラム

中居正広事件は「ポジティブ」な空気が生んだ...誰もが無縁ではない「肯定の魔法」のダークサイド

2025年04月28日(月)19時42分

ほかにもある。中居氏が編成部長に、女性から入院の連絡があったことを伝えるメールだ。「やりたい仕事もできず、給料も減り、お金も無くあの日を悔やむばかりと。見たら削除して」と中居氏は伝え「どうしよか」と相談している。すると編成部長は中居氏に「なかなかですね、、私から無邪気なLINEしてみましょうか??」と返信していた。

ただ調べるのではなく「無邪気」にという擬態がどれだけ中居氏を安心させ、頼もしい奴だと思わせただろう。

私はここでふと思い出した。複数の友人から聞いた対話型生成AI(人工知能)、チャットGPTについての感想だ。便利なだけでなく、会話すると自分のことをすごく肯定してくれるし褒めてくれ、ポジティブな気持ちになれるというのだ。

毎日が楽しくなればいいことではと思うが「あまりに自分を肯定してくれるのでハマると自分が見えなくなるのでは......」という感想も聞く。


編成部長のメールは全て中居氏を楽しく安心させるため、何かを共有することでますます密接になるためのテクニックのようにも思えた。中居氏にとっては自分をポジティブな気分にさせてくれる存在。

会社的には「仕事ができる人」だったのかもしれないが、それが「ハラスメントに寛容な企業」に直結していたのが実態だった。

チャットGPTの有害な回答を防ぐため、ケニアの労働者が低賃金で雇われ、暴力的、性的コンテンツを選別させられていたと報じられていたのは2年前だ。「ポジティブ」の裏で誰かが犠牲になっていないか、ダークサイドにも注意したい。

※イラストは編集部の新しい試みとして画像生成AI「DALL-E3」で作成されています。


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プロフィール

プチ鹿島

1970年、長野県生まれ。新聞15紙を読み比べ、スポーツ、文化、政治と幅広いジャンルからニュースを読み解く時事芸人。『ヤラセと情熱 水曜スペシャル「川口浩探検隊」の真実』(双葉社)、『お笑い公文書2022 こんな日本に誰がした!』(文藝春秋)、『芸人式新聞の読み方」』(幻冬舎)等、著作多数。監督・主演映画に『劇場版センキョナンデス』等。 X(旧Twitter):@pkashima

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