コラム

米大統領選の「超重大変化」で得する人は誰?(パックン)

2023年02月11日(土)16時47分
パックン、バイデン、大統領選

今回の変更は再選を狙うバイデンに満面の笑みをもたらすか(2020年3月、サウスカロライナ州の予備選集会) REUTERS-ELIZABETH FRANTZ

<世界一の権力者とも言われる米大統領が実はアイオワ州で決まりがち、という状況をバイデンは変えたが...>

人口3.3億人のアメリカの大統領は、何人で決めれば良いでしょうか?

一人一票を投じて、3.3億人で決めるのが理想でしょうね。もちろん、年齢や国籍、犯罪歴などの制限で投票できない人もいて、有権者の数だけを見ると全国に約2.4億人になる。この全員でもいいとしよう。

現実はこの理想からほど遠い。前回投票したのがその中の66%で、約1.58億人。つまり、全人口の半分弱の人が大統領を選んでいる......。と考えるのが普通でしょう。

しかし、ご存じの通り、僕は普通じゃない。ここで、ありふれた投票率の話なんかしない。僕が注目しているのは、大統領を選ぶ制度において莫大な影響力を持っている、それよりももっと極端に少ない、一握りの方々。

少数の国民たちの判断で、大統領になる人がほぼ決定するのだが、誰の話かわかるかな? もちろん、民主党・共和党という2大政党の中にもキープレーヤーはいる。各候補の情報をリークしたりイメージを決定づけたりするメディア関係者もいる。莫大な政治献金で力を振るう超お金持ちもいる。

アイオワ州で勝てばマイナー候補も全国区に

だが、僕は政界、経済界、マスメディアできらきら輝いている「エクストリーム・エリート」を取り上げるような陳腐なコラムを書かない! 僕は、むしろ極端に地味な、光をまったく放たずに「エクストリーム・非エリート」の方にスポットを当てたいのだ。

それは、米中西部のアイオワ州に住んでいる皆さんのことだ。アイオワ自体はごく普通の州。北米大陸のほぼど真ん中に位置し、50州の中で面積が26位、人口は31位、平均収入は30位だ。製造業や農業が中心の経済、キリスト教徒の白人中心の社会、肉とジャガイモ中心の食生活。どれをとっても極めて「アメリカ的な」州だ。ここの州民のもれなく優しいし、アイオワは本当にいいところだ! 行ったこともない、行く予定もない僕でさえそれを確信している。

実は、この「エクストリーム・オーディナリー」なアイオワの皆さんが大統領を選ぶ過程において、とんでもない影響力を持っているのだ。アイオワ大好きな僕だが、この点は納得いかない。

仕組みを説明しよう。4年おきの大統領選挙の前に、民主党・共和党はそれぞれの公認候補を選ぶ予備選挙や党員集会を各州で行う。そして全国で最初に党員集会が行われるのがアイオワ州。知名度が低くて、勝つ見込みがないマイナー候補でも、アイオワで活躍すれば、一気に全国の目線も献金も集まるようになる。前述したエリートたちにも目を付けてもらえる!

プロフィール

パックン(パトリック・ハーラン)

1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『パックン式 お金の育て方』(朝日新聞出版)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾との平和的統一の見通し悪化、独立「断固阻止」と

ワールド

北朝鮮、韓国に向け新たに600個のごみ風船=韓国

ワールド

OPECプラス、2日会合はリヤドで一部対面開催か=

ワールド

アングル:デモやめ政界へ、欧州議会目指すグレタ世代
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
2024年6月 4日号(5/28発売)

強硬派・ライシ大統領の突然の死はイスラム神権政治と中東の戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 2

    キャサリン妃「お気に入りブランド」廃業の衝撃...「肖像画ドレス」で歴史に名を刻んだ、プリンセス御用達

  • 3

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...すごすぎる日焼けあとが「痛そう」「ひどい」と話題に

  • 4

    「自閉症をポジティブに語ろう」の風潮はつらい...母…

  • 5

    ウクライナ「水上ドローン」が、ロシア黒海艦隊の「…

  • 6

    1日のうち「立つ」と「座る」どっちが多いと健康的?…

  • 7

    ヘンリー王子とメーガン妃の「ナイジェリア旅行」...…

  • 8

    「みっともない!」 中東を訪問したプーチンとドイツ…

  • 9

    中国海外留学生「借金踏み倒し=愛国活動」のありえ…

  • 10

    「こうした映像は史上初」 火炎放射器を搭載したウク…

  • 1

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 2

    中国海軍「ドローン専用空母」が革命的すぎる...ゲームチェンジャーに?

  • 3

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 4

    キャサリン妃「お気に入りブランド」廃業の衝撃...「…

  • 5

    ハイマースに次ぐウクライナ軍の強い味方、長射程で…

  • 6

    仕事量も給料も減らさない「週4勤務」移行、アメリカ…

  • 7

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 8

    都知事選の候補者は東京の2つの課題から逃げるな

  • 9

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 10

    少子化が深刻化しているのは、もしかしてこれも理由?

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story