コラム

オリンピックイヤーの今年、日本は世界のリーダーでいられるか?

2020年01月30日(木)18時20分

日本がリーダーシップを発揮できる分野は……これだ! metamorworks/iStock.

<記念すべき2020年に、日本が国際社会でインパクトを与えられる分野は......>

開国からほんの数十年で、アジアで初めて先進国の仲間入りを果たした。世界で初めての平和憲法を持ち、世界第2位の経済大国に上り詰めた。過去に日本はリーダーであったのは間違いない。では、この先はどうなのか。リーダー役を務めるのか? 世界の注目を浴びるオリンピック・イヤーに、その答えをYes!にしたい。

では、どの分野に注力するのかを考えよう。

まず、イノベーションや貿易において頑張ろう。日本の国際特許の出願件数はアメリカ、中国に次いで世界3番目。日本人はノーベル賞をほぼ毎年獲るし、イグノーベル賞も13年連続受賞している(昨年は5歳児の1日当たりの唾液分泌量を解明した明海大の研究チームがまさにその「垂涎の的」を射た)。同時に、今や自由貿易の旗手となっている日本だが、自動車、電気機械、化学製品などの輸出品も依然として世界からの高い需要を誇る。最近一番話題になったのは、日本の自動車メーカーから楽器の箱でレバノンに空輸された「密輸品」だが、頑張ろう。

次は、環境の分野でも活躍できそう。人口が減り、都市化が進んでいる日本はCO2(二酸化炭素)の排出量を減らしやすい状況だ。クリーンエネルギーへのシフトを加速すれば、アジア一の環境保全国になれる。費用の面はなんとかなる。代替エネルギーのコストが暴落しているし、化石燃料の輸入にかけている年間20兆円を国内のクリーン発電に回すだけでも資金源には困らない。建設土地の問題に関しても、いい案がある。福島第一原発周辺の「帰宅困難区域」に大規模な太陽光発電所や風力発電所を作れば、原子力発電所数基分の電源を確保できる試算になる。東京までの高圧送電線は整っているし、土地の使用料が避難生活中の元住民の収入にもなる。電気と元気を東北に取り戻そう!
 
あとは、文化も日本の強み。日本の漫画やアニメは世界中で愛されるキラーコンテンツ。スポーツ界でも日本の選手やチームが存在感を増している。和食や日本酒も人気急上昇中。日本の文化は大奮闘中! 合言葉は、ワンピース! ワンチーム! ワンカップ大関! 

日本はこれらの分野で間違いなく活躍できるのだ。もちろん、莫大な投資や時間がかかり、研究開発やマーケティングにも注力しないといけないかもしれないけど。

LGBTQのために立ち上がろう

そこで、もう1つの分野を考えよう。お金も時間もあまりかけずに、すぐ国際社会のリーダーになれるもの。それはLGBTQ(性的少数者)の人権保障だ。

昨年、台湾が同性婚を認めるように法改正を行った。アジアで初めてだ。少しリードを譲ったね。しかし、インドネシアやサウジアラビアなどは同性婚どころか、同性同士の性的行為だけで死刑を含む厳罰対象となる国もあり、まだまだリーダーシップが必要。そこで日本が立ち上がろう。

日本国憲法に婚姻の規則として「両性の合意」があるから、すぐに台湾の真似はできないと言う人が多い。しかし、結婚と同等の権利を与えるシビル・ユニオン制度の設置は可能なはず。これならアジア初だ! しかも、台湾の同性婚制度は養子縁組に関して少し制限があるので、日本でそれをなくせば台湾を追い越し、リーダーになれる。もしくは、アジアで初めて、同性婚を認める憲法にするのも手。つまり、安倍さんの念願の憲法改正できるかもしれない! 「軍」ではなく「婚」で、狙っていたものと違うが、同じく歴史に残るのだ。 

プロフィール

パックン(パトリック・ハーラン)

1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『パックン式 お金の育て方』(朝日新聞出版)。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

インドの卸売物価、11月は前年比-0.32% 下落

ビジネス

日経平均は反落、ハイテク株安い 日銀利上げ観測でT

ビジネス

フジHD、33.3%まで株式買い付けと通知受領 村

ワールド

香港民主派メディア創業者に有罪判決、国安法違反で
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 5
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 8
    大成功の東京デフリンピックが、日本人をこう変えた
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story