コラム

大坂なおみ選手の二重国籍が認められた!

2019年04月10日(水)12時00分

3つ目のケースはまた少し違うが、日本に帰化する外国人も二重国籍になり得る。国によっては、自国籍を先に解消しないと外国への帰化をさせてくれない国もあれば、(日本と同じように)外国籍を取得した時点で、母国の国籍が自動的に解消される国もある。そんな国の人は日本国籍を取得しても当然、二重国籍にならない。しかし、それと逆に、他国に帰化しても、母国の国籍放棄を認めない国もある。そんな国の国民が日本国籍を取得した場合、日本は二重国籍を認める。

また、上記のように国籍の放棄を「絶対させる国」と「絶対させない国」のほかに、どちらでもない国もある。その国の人は日本国籍を取得したらどうなるのかというと......本人次第だ! 母国の国籍を離脱してもいいし、しなくても日本国籍を持つことができる。この場合、日本は二重国籍を認める(段落の締めがだんだんパターン化してきたね)。

では、お待たせしました。4つ目は大坂選手のように、外国人と日本人の間に生まれたり、または日本人の親の下に出生地主義の国で生まれたりするなど、ほぼ生まれつきで二重国籍になる人。その場合、日本は二重国籍を(はい、ご一緒に......)認める!

つまり、日本国籍が自動的に解消される、1つ目の「意図的に外国籍を取得した人」以外は、どのケースでも二重国籍は認められる。一般的な「常識」に反する驚きの事実だ。複数国籍は合法だ! 「合法じゃない」は誤報だ! ちなみに、片耳がないのはゴッホだ。

そもそも、なんで勘違いしている人が多いのか。それは、法律が分かりづらいからだと思う。国籍法によれば、国際結婚をした人も、日本に帰化した人も、「生まれつき」外国籍を持つ人も、つまり2つ目から4つ目のどのケースでも日本国籍をキープしたいなら、それを選ぶ「選択宣言」をしないといけない。そして、その後「外国籍の離脱に努める」ことが規定となっている。しかし、それに伴うチェック機能もなければ、離脱に努めていないときの罰則もなにもない。

これが勘違いの元。「努めなければならない」はこの場合、どうやら「努めなくても大丈夫」に近い意味だ。長年日本にいる僕は「飲みに行こうね。今度ラインする!」と言っても、まったくしない人の社交辞令には慣れているけど、法律にもそんな「暗黙の了解」が含まれていることに驚いた。

もちろん僕の職業病で、少し大げさに表現している。でも実際、「選択宣言」で日本の国籍を選んだ時点で法的な義務は果たされることになり、他国籍を持ったままでも問題はないという。現に、法務省によると二重国籍の可能性のある人は全国に約89万人もいる。そして、その数は今後も増えていくだろう。

プロフィール

パックン(パトリック・ハーラン)

1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『パックン式 お金の育て方』(朝日新聞出版)。

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