コラム

大坂なおみ選手の二重国籍が認められた!

2019年04月10日(水)12時00分

今年1月の全豪オープンで初優勝し、優勝トロフィーにキスする大坂なおみ選手 Kim Kyung Hoon-REUTERS

<大坂なおみ選手は日本とアメリカの両方の国籍を持つことができる! 日本代表にもなれるし、アメリカでの経済活動もできる>

昨年9月にこのコラム欄で、全米オープンで優勝を果たしたばかりの大坂なおみ選手の二重国籍を認めるように呼び掛けた(「日本は大坂なおみの二重国籍を認めるべき!」)。そしてなんと、早いものでその希望が叶った!もちろん、僕のコラムがきっかけで制度が改正された......という風に受け止めてもらっても構わないよ?! 

でも実は、その希望は前から叶っていたのだ。つまり、前から日本の法律は二重国籍を容認している。恥ずかしいことに、前回のコラムの根拠にしていた「日本は二重国籍を認めない」という認識が間違っていたのだ。その事実に気づかせてくれたのは、国籍法にまつわる裁判に取り組んでいる近藤博徳弁護士と、日本の国籍法改正に向けて運動中のトルン紀美子さん。いろいろ教えてくださったこの2人には心から感謝している。お礼に、ここで2人の話をたっぷりとパクらせていただこう。

では、今回こそ正しい解説を!

まず二重国籍を考えるときは、4つのパターンに分けると分かりやすい。

▼1つ目は、日本人が意図的に外国籍を取得したケース。
▼2つ目は、日本人が国際結婚などで自動的に相手の国の国籍を得た場合。
▼3つ目は、外国人が日本国籍に帰化したとき。
▼4つ目は、国際結婚の子供など、未成年のうちに複数の国籍を持つケース。

一番関心のある大坂選手が入るタイプを、最後に持ってきたのには理由がある。コラムを最後まで読んでほしいからだ! それと、多くの人はこれらを全部ひとまとめにして考えているけど、この4つは法律上の扱いが微妙に異なることをきちんと理解してもらいたいからでもある。

一番分かりやすいのは、1つ目の日本人が外国籍を意図的に取得したケース。もとい! 正確にいうと、「元日本人」だ。なぜなら法律上、外国籍を取得したとたんに、日本国籍は自動的に解消されるからだ。つまりこの場合、「二重国籍」になり得ない。決まりとして、外国籍を取得した人は日本政府に「国籍喪失届」を出さなくてはいけない。しかし、届を出さなくても二重国籍にはならない。その人は、日本の旅券を持ち続けるかもしれないし、戸籍が資料上に残るかもしれないが、それらは実体のないものになる。近藤弁護士によると、その状態の人は重国籍者ではなく、日本人のように振舞っている外国籍の人に当たる。

僕も、電話で予約を取ったりするときに「パトリック」を聞き取ってもらえなくて、「服部くん」と日本人を名乗ったりすることもあるけど、それよりかなりシビアな状態だ。国籍解消後の「元日本人」は在留資格なしで日本に滞在している場合、退去強制手続きの対象になり得るという(母国から追放されることになり、かわいそうだと思うが、この制度の感想は後にしよう)。
 
2つ目の場合は、これとまったく異なる。日本人が外国人と結婚したり、養子縁組をしたり、両親がどこかの国に帰化したり、外国人の父に認知されたりすると、国によっては、自動的にその国の国籍が与えられることもある。国際結婚おめでとう! ウェディングプレゼントは国籍! そうなると、本人の志望による外国籍取得ではないし、当然この場合、日本は二重国籍を認める。

プロフィール

パックン(パトリック・ハーラン)

1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『パックン式 お金の育て方』(朝日新聞出版)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ネットフリックス、第1四半期加入者が大幅増 売上高

ビジネス

米国株式市場=ほぼ横ばい、経済指標と企業決算に注目

ビジネス

USスチール買収計画の審査、通常通り実施へ=米NE

ワールド

イラン外相、イスラエルのさらなる軍事行動を警告 「
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 3

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 4

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 5

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 6

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 9

    ヨルダン王女、イランの無人機5機を撃墜して人類への…

  • 10

    紅麴サプリ問題を「規制緩和」のせいにする大間違い.…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story