コラム

トランプ米大統領が再選されるワケ

2017年12月26日(火)11時40分

では、どうやったらそんな有権者のハートをつかめる? トランプの動きを見習えば、そんな「Single Issue票獲得マニュアル」ができそうだ。例えば、大統領は
  
■TPPから離脱したり、NAFTA(北米自由貿易協定)の見直しを進めたりして「保護貿易ファースト票」を

■イスラム圏諸国からのアメリカ入国禁止令を出して「キリスト教ファースト票」を

■白人至上主義を擁護したり、黒人に対する警察の暴力に抗議して国歌斉唱中にひざまずいた黒人のアメフト選手を批判したりして「白人ファースト票」を

■「信仰の自由」という名目でLGBTQ(性的少数者)への差別を擁護したり、トランスジェンダーの入隊禁止を宣言したりして「異性愛者ファースト票」を

■重い精神病を持っている人に銃を売らないルールを廃止したり、銃乱射事件を受け「銃規制のせいで犠牲者が増えたかもしれない」と発言したりして「銃ファースト票」を
 
■側近に複数の将軍を置いたり、国防予算を増やしたり、日本も含む同盟国に大量の武器を売りつけたりして「軍ファースト票」を

■エルサレムをイスラエルの首都として承認して、保守系のユダヤ教徒や福音派のキリスト教徒の「イスラエル・ファースト票」を

■高所得者や法人への税率を下げて「お金持ちファースト票」を

確実に自分のものにした。「アメリカ・ファースト」は全国民を指すものじゃなかったようだが、それぞれの政策や発言に賛否両論があっても、特定の少数派を喜ばせる「一部ファースト」としては実に有意義でお勤めだ。

ちなみに、最後の税制改正が最も巧みな技かもしれない。改正法案は長期的に中流階級以下の多くの人にとって増税になる。一方、企業や年収7万5000ドル(約850万円)以上の高所得者はずっと減税の対象になる。相続税の廃止も永遠に残る。これでトランプ一族だけでも10億ドル単位で得するとみられる。そのため、この法案は「逆ロビン・フッド」、つまりお金のない人からお金を取り、お金持ちに回すものだと批判されている。

プロフィール

パックン(パトリック・ハーラン)

1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『パックン式 お金の育て方』(朝日新聞出版)。

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