コラム

日本はコロナ危機ではなく人災だ

2020年04月23日(木)11時50分

一方、政府は最大限の対応をしている。中小企業への資金繰り融資は世界的にももっとも経験豊富だ。政府系金融機関がこれほど発達している国は先進国ではない。これに加えて、民間金融機関を通じても資金繰り支援を行うことを政府はいち早く打ち出し、5年間返済猶予の無利子無担保という世界に類のない破格の支援策だ。日本ではこれが破格だと認識されていないのは、日本政府はいつもこの手の資金繰り支援を行っており、公的金融機関も慣れているから、特別感がなく、当たり前と思っているからだ。そして、いつもやっているから、動きは迅速だった。米国も、今回は史上初の試みをFRB(米国の中央銀行)が行い、中小企業に対する金融支援措置が議会を通過したが、その37兆円の融資保証枠が早くも枯渇し、追加措置が決定し、30兆円超の保証となる見込みだ。一方、経験豊富な日本は融資資金が枯渇していない。

しかし、これではだめだと日本の飲食店の人々が訴えているとメディアは報道している。理由は、いつまでこれが続くか分からないので、借金はしたくない。なんとかしてくれ、というものだ。

政府に現金給付を求めるな

これは真の危機感がないことの表れだ。本当にいつまで続くか分からないのであれば、政府の支援金で売り上げゼロで長期にわたって維持できるとは思えないから、一日でも早く廃業し、止血するべきである。投資をかなりしていて続ける意思が強いなら5年返済猶予の無利子無担保の融資を受けて資金繰りをしのぎ、2月半ばから5月半ばまでの3カ月の売り上げの急減による赤字を5年かけて返済する方策を採るしかない。危機である米国は生き残りをかけて従業員を解雇したため、1カ月で2000万人の新規失業者が生まれ、37兆円の資金支援措置は、従業員に対する休業手当を払うための支援であり、米国ですら給付ではなく、融資支援だ。

日本の飲食店の難しさは賃料の問題で、日本の不動産取引慣行は柔軟性に欠けているという問題点がある。政府に訴えるべき点はこの点で、家賃の猶予、減免をオーナーと交渉するために政府が全力で支援するべきだ(政府は、オーナーに減免した場合の優遇措置を決定した)。

つまり、日本政府の中小企業支援の体制は世界最高水準なのである。オーナーと家賃交渉をとことんする前に、従業員を解雇する前に、政府に現金を要求するのは順番が違う。まずは経営者として、賃金と家賃に関する政府の支援を全面的に活用し、従業員には休業手当で耐えてもらうか、解雇して失業手当で耐えてもらうか説得し、家主と交渉する。これが経営者としての現在緊急にやることのすべてであるし、それでも継続が難しいと判断するなら廃業するべきである。

しかし、世論は政府に現金給付を求め、政府ができないというと、自治体が現金を給付することとした。東京都は50万、あるいは100万円を配る。そんな国は世界中どこにもない。

プロフィール

小幡 績

1967年千葉県生まれ。
1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現財務省)入省。1999大蔵省退職。2001年ハーバード大学で経済学博士(Ph.D.)を取得。帰国後、一橋経済研究所専任講師を経て、2003年より慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應ビジネススクール)准教授。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。新著に『アフターバブル: 近代資本主義は延命できるか』。他に『成長戦略のまやかし』『円高・デフレが日本経済を救う』など。

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