最新記事
シリーズ日本再発見

五輪で日本の喫煙環境はどう変わるのか?

2016年12月19日(月)15時20分
高野智宏

golubovy-iStock.

<五輪開催に向けて受動喫煙防止対策の強化が掲げられているが、検討のベースは他国の対策状況。であれば、喫煙者・非喫煙者双方の外国人に意見を聞いてみたらどうだろうか>

【シリーズ】五輪に向けて...外国人の本音を聞く

 2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催を4年後に控え、受動喫煙(室内又はこれに準ずる環境において、他人のたばこの煙を吸わされること)の防止に関する検討が行われている。世界保健機構(WHO)と国際オリンピック委員会(IOC)が「たばこのないオリンピック」を推進しているからだ。

 先進国の多くでは公共の場を屋内全面禁煙とする法律が定められているが、日本ではこれまで努力義務にとどまっていた(条例レベルでは罰則付きもある)。受動喫煙防止対策が遅れていると指摘されてきた日本だが、五輪開催を機に、日本の喫煙環境は変わるのだろうか。

 厚生労働省は10月、受動喫煙防止対策の強化を目指したたたき台を作成した。「オリンピック・パラリンピック開催国と同等の水準とするため、従来の努力義務よりも実効性の高い制度とする」としており、施設管理者や喫煙者を罰則付きで規制する内容が盛り込まれている。

 たたき台は、イギリスのように建物内を禁煙とする"スモークフリー社会"を目指しつつ、日本の現状を踏まえ、「イギリスと韓国の混合型の制度を導入する」としている。韓国はイギリスと異なり、建物内禁煙だが、喫煙室の設置は認めている(学校や医療機関などを除く)。

 このように、他国の受動喫煙防止対策が検討のベースとなっているようだ。であれば、日本在住経験を持つ外国人に意見を聞いてみるのはどうだろう。日本の喫煙環境について彼らはどう思っているのか。喫煙者、非喫煙者の双方に聞いてみた。

「分煙は不十分だが、喫煙マナーは良い」

 イギリスの大学で研究職に就くロシア人のコンスタンチン・レコンツェフさん(29歳)は非喫煙者。日本には以前、4年ほど住んでいた。日本の飲食店における喫煙環境については、「(当時は)禁煙席でもたばこの匂いがする店が多かった。イギリスのように店内は完全禁煙にすべきだ」と言う。

 一方、かつて東京で5年暮らし、今はフランクフルト在住のドイツ人通訳者、マリア・ドイチェさん(37歳、非喫煙者)は、当時の日本の飲食店は分煙対策が不十分だったとしつつも、こう語った。「喫煙する権利があるため、喫煙できる環境の提供も必要かもしれない。受動喫煙対策は重要だが、完全禁煙の必要はないと思う」

 このように建物内での喫煙については意見が分かれたが、日本人の喫煙マナーに話が及ぶと、おおむね評判がよかった。屋内ではなく路上での喫煙に関しては「喫煙所でたばこを吸っており、みなルールを守っている」「喫煙所がきれいに使用されている」といった印象を持っているようだ。

 ヨーロッパなどでは、屋内が禁煙のため代わりに路上で喫煙するのが一般的。それゆえ「日本では路上にたばこの吸い殻があまり落ちていないし、歩きたばこをする人が他の国より少ないと思う」(レコンツェフさん)という評価になっている。

【参考記事】東京は泊まりやすい? 一番の不満は「値段」じゃなかった

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ユーロ圏銀行、資金調達の市場依存が危機時にリスク=

ビジネス

欧州の銀行、前例のないリスクに備えを ECB警告

ビジネス

ブラジル、仮想通貨の国際決済に課税検討=関係筋

ビジネス

投資家がリスク選好強める、現金は「売りシグナル」点
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 3
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 4
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 5
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 9
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 10
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中