最新記事
シリーズ日本再発見

東京は泊まりやすい? 一番の不満は「値段」じゃなかった

2016年12月02日(金)11時10分
中村美鈴

amesy-iStock.

<急増する外国人観光客。2020年には4万4000室が不足すると見込まれ、政府は民泊普及の規制緩和にも前向きだ。しかし、当の外国人たちはすでにAirbnbを頻繁に利用している。ホテルではダメなのか、宿泊施設に何を求めているのか......。東京は泊まりやすい街ですか? 本音を聞いてみた>

【シリーズ】五輪に向けて...外国人の本音を聞く

 アメリカ人のエリス・ワイアットさん(31歳)は今年の夏、恋人と一緒に日本を訪れ、約2週間かけて東京や京都などを観光した。泊まったのは普通のホテルだけではない。民泊仲介サイトのAirbnb(エアビーアンドビー)も何度か利用した。 

 Airbnbを使い、東京・墨田区のマンションの1室をまるまる貸し切って1泊。ダブルサイズのベッド、キッチン、洗濯機つきで約75ドルだった。「部屋は広くはなかったけど、スーツケースの置き場所に困るほど狭い日本のビジネスホテルに比べれば快適だった」と彼女は言う。「東京の人たちがどんな生活をしているのか垣間見えたのも良かった」

 Airbnbを利用したのはなぜ? 「東京のホテルは、おそらくニューヨークを除いてアメリカのどの都市のホテルよりも狭い」とワイアットさん。ビジネスホテルよりも安く、広さがあるのが民泊を選んだ理由だという。

 日本を訪れる外国人観光客の数が、今年初めて2000万人の大台を突破した。観光庁によると、1~10月の累計で2011万人を超え、年末までに2400万人前後に達する見込み。ワイアットさんはその2400万人の中の1人だ。

 政府は東京五輪が開催される2020年までに「訪日外国人数4000万人」を目標に掲げているが、まったくの夢物語でもなさそうだ。ただし、外国人観光客がこのまま急増を続ければ、ホテルなどの宿泊施設が足りなくなるといわれている。みずほ総合研究所によれば、2020年には東京や大阪を中心に「4万4000室が不足」する可能性があるという。

【参考記事】 Airbnbが家を建てた――日本の地域再生のために

Airbnbだけで300万人訪日、トップは韓国人

 東京都心では五輪での需要拡大を見越して、「アマン」や「星のや」などの高級ホテルから中級・ビジネスホテルまで新増築ラッシュが続いているが、そうした供給の増加を見込んでも客室は不足すると指摘されている。そこで打開策として注目されているのが、一般の空き部屋や空き家を貸し出す「民泊」だ。

 ワイアットさんが利用したAirbnbは、民泊仲介サイトの世界最大手だ。同社は11月、今年1~10月に同社を利用した訪日外国人の数が300万人を突破したと発表した。前年比2倍以上の伸びを見せているという。利用者を出身国別にみると、トップは韓国で、中国、アメリカ、香港が続いた。

 ホテル不足問題を解決したい政府も、民泊普及のための規制緩和に前向きだ。民泊を営むには旅館業としての許可を得る必要があるが、現在はルールが曖昧で、無許可でAirbnbに登録している部屋は多い。政府は今年4月に旅館業法の政令を改正して条件を緩和したほか、さらに規制を緩めた民泊新法の制定も目指している。新法ではインターネットで届け出るだけで営業可能になるなど、事実上の「全面解禁」になる見込みだ。

【参考記事】東京五輪まであと4年、「民泊」ルールはどうする?

 このように増加する訪日外国人のニーズを満たすための「宿づくり」が進んでいるが、当の外国人観光客は東京の宿にどんな印象を抱いているのだろうか? ワイアットさん以外にも、東京を訪れたことのある外国人に聞いてみた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場・寄り付き=S&P・ナスダック1%超安

ワールド

金総書記が北京到着、娘も同行のもよう プーチン氏と

ビジネス

住友商や三井住友系など4社、米航空機リースを1兆円

ビジネス

サントリー会長辞任の新浪氏、3日に予定通り経済同友
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 2
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 3
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シャロン・ストーンの過激衣装にネット衝撃
  • 4
    世界でも珍しい「日本の水泳授業」、消滅の危機にあ…
  • 5
    映画『K-POPガールズ! デーモン・ハンターズ』が世…
  • 6
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 7
    BAT新型加熱式たばこ「glo Hilo」シリーズ全国展開へ…
  • 8
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
  • 9
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 10
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 1
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 2
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 3
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 4
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 5
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 6
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 7
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 8
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪…
  • 9
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 10
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中