コラム

コロナの余波「食品値上がり」──世界的な買いだめと売り惜しみの悪循環

2020年04月21日(火)12時00分

とはいえ、国際的な取引が減れば、食品価格は上がりやすく、それが輸入する側の食卓に影響を及ぼすことは確かだ。そのしわ寄せを最も喰うのは所得の低い人々であるため、WHOだけでなく国連も食糧輸出の規制に懸念を示している。

状況次第で長期化する恐れ

その一方で、事態を楽観する意見もある。コロナが収束すれば寸断されていたサプライチェーンは回復されるはずで、そうなれば影響は一時的なもので済む、というのだ。
 
その方が筆者もありがたい。しかし、この目算には落とし穴がある。

世界恐慌後の1930年代以来最悪の景気低迷」ともいわれるなか、株式市場の低迷が長期化すれば、投資家が農産物や資源の市場に資金を移しやすくなる。それは食品価格を実態以上に引き上げる効果をもつ。これはリーマンショックの後にもみられたことだ。

つまり、コロナが収束してもすぐに食糧価格が下がるとは断定できない。

この不安感が先行すれば、結局パニック買いに拍車がかかることになり、世界はこのアリ地獄に陥るかどうかの瀬戸際にあるといえるだろう。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

※筆者の記事はこちら

プロフィール

六辻彰二

筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売

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