クルド人を見捨てたのはアメリカだけではない
そして、その状況はすでに生まれつつある。実際、先述のように、クルド人はトルコの攻撃を受け、自ら進んでシリア政府の「保護下」に入っている。
これはトルコ以外の関係各国にとっても利益になる。
シリア政府もクルド人の独立を決して認めていない。また、シリア政府が全土を回復すれば、ここを中東の足場にするロシアにとっても安心材料になる。そして、やはり国内にクルド人問題を抱え、さらにシリア内戦でシリア政府を支援してきた隣国イランにとっても悪い話ではない。
「クルド人を独立させないこと」が落し所
そのうえ、これはクルド人を支援してきた欧米諸国の利益にも反しない。クルド人地域をシリア政府とロシアが握ることはIS対策にもなるからだ。
欧米諸国では「YPGの勢力衰退とアメリカ軍の撤退で、ISが息を吹き返す」という見方が支配的だ。しかし、シリアでIS占領地域の多くを制圧してきたのは、市民の犠牲を厭わない空爆などを繰り返したシリア軍とロシア軍だった。(その良し悪しはともかく)シリア軍やロシア軍がクルド人支配地域をすっかり手中に収めれば、ISの残党にとって、YPGやアメリカ軍以上の脅威になるだろう。
シリア内戦発生直後、欧米諸国はアサド大統領の独裁が内戦を招いたとして「アサド退陣」を求めた。それまで関係の悪かったアサド大統領を、どさくさに紛れて引きずり降ろそうとしたわけだが、ロシアの支援もあってシリア政府は今やクルド人支配地域以外のほとんどを手中に収めている。今更「アサド退陣」がほぼ不可能なら、欧米諸国が「シリア政府によるIS掃討」をセカンド・ベストと捉えても不思議ではない。それなら、欧米諸国がIS掃討のためのコストを負担しなくて済むからだ。
もちろん、クルド人地域をシリアやロシアの手に委ねれば、クルド人を見捨てることになり、欧米諸国に「裏切り者」の汚点は残る。しかし、国際政治に裏切りはつき物で、多くの人は長く覚えていない。
だとすると、クルド人がシリア政府の保護下に収まることは、関係各国にとっての落とし所になるとみてよい。もちろん、それがクルド人の涙の上に成り立つことは、いうまでもない。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
※筆者の記事はこちら。
中国出身テロリストがシリア軍幹部に抜擢──それでも各国が黙認する理由 2025.05.26
世界に混乱をもたらす「トランプ関税」をロシアが免れたワケ 2025.04.09
同盟国にも牙を剥くトランプ大統領が日本には甘い4つの理由 2025.03.07
「核兵器を使えばガザ戦争はすぐ終わる」は正しいか? 大戦末期の日本とガザが違う4つの理由 2024.08.15
-
生成AI商材/大手外資系「インサイドセールス「SV候補」」/その他コンサルティング系
ブリッジインターナショナル株式会社
- 東京都
- 年収340万円~450万円
- 正社員
-
人事・総務事務/「正社員」外資系専門商社 HR業務「在宅週2OK」
マンパワーグループ株式会社
- 東京都
- 年収880万円~
- 正社員
-
外資金融機関での施設警備/警備経験/夜勤あり/稼げる仕事/深夜はたらく・夜勤/経験不問
株式会社G4S Secure Solutions Japan
- 東京都
- 月給35万円~37万円
- 正社員
-
外資金融機関での施設警備スタッフ/高時給/賞与支給/交通費規定支給/社会保険完備/未経験者
株式会社G4S Secure Solutions Japan
- 東京都
- 月給35万円~37万円
- 正社員






