コラム

都議選の敗因を「誤解」する自民党、国難に直面する「重税国家」日本にいま必要なもの

2025年06月25日(水)08時15分

有権者は「政治とカネ」の本質、現金給付の現実を理解

なお、メルツ政権となったドイツは財政収支が改善し過ぎているとの認識を背景に、防衛費拡大を主軸とした積極的な財政政策に転換した。日本では、2022年から「インフレ課税」が効き過ぎて財政収支が大きく改善し、既に重税国家になっていることを意味する。このため、ドイツと同様に財政政策を転換する余地がある。

こうしたデータを把握していることが、トランプ政権が、日本に防衛費の上積みを要求し始めた一つの理由だと筆者は想像している(良い外圧かもしれない)。

都議選での敗北を受けて、自民党の木原誠二選対委員長は、「政治とカネ」問題への不信払拭がなお課題になるとの認識を記者団に表明したという。もっとも、自民党の「政治とカネ」問題の本質は、自民党内の権力闘争であることを多くの有権者は理解しており、もはや関心を持たれていないのが実情だろう。

6月10日のコラムで述べた通り、自らの支持基盤に対して税金を差配することが石破首相の政治目標であるなら、選挙直前に現金給付を行っても、それが将来増税となって返ってくる。多くの有権者はこれを理解しているから、一時的な現金給付の評判がよくないのである。産経新聞の調査によれば、現金給付に対して6割の有権者が否定的な見解を示した。

プロフィール

村上尚己

アセットマネジメントOne シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、証券会社、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に20年以上従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。『日本の正しい未来――世界一豊かになる条件』講談社α新書、など著書多数。最新刊は『円安の何が悪いのか?』フォレスト新書。

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