コラム

習近平政権が反「内巻き政策」を続けても、中国のデフレは続く

2025年09月24日(水)08時35分
中国の習近平国家主席

習近平国家主席は「デフレ」を理解しているのか(9月4日) Lintao Zhang/Pool via REUTERS

<中国株市場は好調だが、いつまで続くのか。中国政府は経済成長を支える政策を発表しているが、懸念すべき点もある>

2025年4月のトランプ関税ショックで大きく下落した世界の株式市場は、トランプ米政権の関税政策を緩和する姿勢が明らかになる中で、米国を中心に株高が続いている。

こうした中で、米国の関税政策の影響を大きく受ける中国の株式市場も好調で、香港のハンセン指数は年初来で大幅な株高である(年初来+32.3%、9月19日)。ハンセン指数には劣るが、中国本土株(上海総合指数)も、米国や日本とほぼ同様の株高となっている。2025年の中国株市場がここまで好調を維持していることは、筆者にとって予想外だった。

まず、関税政策を含めてトランプ政権の中国への強硬姿勢が強くないことが最大の要因だろう。米中の関税交渉は長期化して、4月に打ち出された大幅な関税賦課は先送りされている。

トランプ大統領は、覇権国として挑戦する中国を封じ込めるよりも、同国との交渉で自らが政治的な成果を得ることを優先事項としているとみられる。そして、ロシアとウクライナの停戦交渉を進展させるにあたり有力なプレーヤーである習近平氏を、トランプ政権は慎重に扱っているということもあるのだろう。

また、米国ではMEGAキャップ株(編集部注:時価総額の大きい超大型株)が大きく上昇しているが、生成AIへの期待から、中国株市場でもこれに関連する企業の株高が指数全体を押し上げているとみられる。

もっとも、米国の対中関税率は昨年対比で上昇しているので、足元で中国から米国への輸出は落ち込んでおり、経済的なダメージは小さくない。

プロフィール

村上尚己

アセットマネジメントOne シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、証券会社、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に20年以上従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。『日本の正しい未来――世界一豊かになる条件』講談社α新書、など著書多数。最新刊は『円安の何が悪いのか?』フォレスト新書。

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