コラム

習近平政権が反「内巻き政策」を続けても、中国のデフレは続く

2025年09月24日(水)08時35分

反「内巻き政策」がうまくいかない理由

一方で、習近平政権は経済成長を支える政策を発表しており、中国人民銀行(中央銀行)による利下げや消費喚起政策などが実現している。これらの対応が支えとなり、中国経済の減速はこれまでのところ表面上は限定的である。

2025年前半のGDP成長率は5%台を維持しているが、今後も政府の経済政策が中国の株高を支えるとの見方がある。

ただし、中国政府は昨年から、反「内巻き政策」を掲げてきた。「内巻き」とは、英語の"involution"に由来し、元々は人類学において「過剰な労働投入による非効率な生産」を意味する。

職場での行き過ぎた競争や業界での競争過多による過剰生産を是正すべきというのが、習近平政権の問題意識である。海外からも、中国企業による鉄鋼や太陽光パネルなどの大量生産が批判されており、「中国が再びデフレを輸出している」との批判も根強い。

それでは、中国経済は反「内巻き政策」によって上向くのだろうか? 問題となっている過剰生産を当局による指導で是正しようとしているようだが、そもそも市場ルールから逸脱し、補助金投入で経営されている国営企業が依然として市場シェアを得たままであることが過剰生産の問題を引き起こしているのだろう。

この点を放置したまま、政治的に競争過多を取り締まっているのが反「内巻き政策」の実情であるとみられる。そうであれば、中国経済の社会主義化が強まるだけで、経済成長の牽引役である民間企業は停滞し続けるのではないか。

プロフィール

村上尚己

アセットマネジメントOne シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、証券会社、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に20年以上従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。『日本の正しい未来――世界一豊かになる条件』講談社α新書、など著書多数。最新刊は『円安の何が悪いのか?』フォレスト新書。

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