コラム

トランプ大統領のFRBへの政治圧力・利下げ要求は株式市場のリスクか?

2025年09月04日(木)06時00分
FRB(米連邦準備理事会)のパウエル議長

FRB(米連邦準備理事会)のパウエル議長はトランプ大統領自身が任命したはずだが… Jonathan Ernst-REUTERS

<パウエル議長「口撃」、住宅ローン不正疑惑での理事解任...FRBの独立性が失われるとの懸念は果たして正しいのか>

米国株市場(S&P500指数)は8月に史上最高値を更新し続け、8月末時点で年初からのリターンは約10%である。多くの市場関係者の年初の見通しを上回る水準まで株価が上昇する中、株高の後追いで、多くのストラテジストが株価予想を修正している。年末にかけて米国株の一段高を期待する市場関係者が増えている。

トランプ米政権が繰り出す政策と市場の評価、そして米国経済の状況、これらが株式市場を動かしている。4月2日の相互関税発表時に株式市場は急落したが、その後は言葉どおりには関税賦課が実現には至らず、トランプ大統領がいわゆるTACO、「Trump Always Chickens Out(トランプはいつも怖気づく)」であるとの認識が広がる中で、株高が続いている。

筆者自身は、相互関税で打ち出された関税率は修正されると予想していたが、自動車関税が15%にとどまるまでの軌道修正に踏み出したのは想定外であった。4月中旬から一足早く上昇が続いた株式市場が、トランプ大統領の真意を見抜いていたということだろう。

関税引き上げが限定的となった一方で、トランプ政権の減税を中心とした財政政策が2026年から効果を発揮する。緩やかに減速している米国経済は2026年には回復に転じるとみられ、トランプ政権の経済政策への信認の強まりが米国株高をもたらしている。

プロフィール

村上尚己

アセットマネジメントOne シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、証券会社、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に20年以上従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。『日本の正しい未来――世界一豊かになる条件』講談社α新書、など著書多数。最新刊は『円安の何が悪いのか?』フォレスト新書。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

英追加利下げ巡る不確実性増大を市場は理解=中銀総裁

ワールド

UAE、イスラエルのヨルダン川西岸入植計画は「レッ

ワールド

日・EUなどとの貿易協定「解消」も、関税裁判敗訴な

ワールド

ハーバード大への助成金停止は違法、米地裁が政権に再
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 2
    「見せびらかし...」ベッカム長男夫妻、家族とのヨットバカンスに不参加も「価格5倍」の豪華ヨットで2日後同じ寄港地に
  • 3
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 4
    「よく眠る人が長生き」は本当なのか?...「睡眠障害…
  • 5
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...…
  • 6
    Z世代の幸福度は、実はとても低い...国際研究が彼ら…
  • 7
    【クイズ】世界で2番目に「農産物の輸出額」が多い「…
  • 8
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 9
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 4
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 5
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 8
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 9
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story