コラム

都議選の敗因を「誤解」する自民党、国難に直面する「重税国家」日本にいま必要なもの

2025年06月25日(水)08時15分
自民党大会

都議選で敗北を喫し、7月20日に参院選を控える石破政権だが(3月9日、自民党大会) ZUMA Press Wire via Reuters Connect

<イラン情勢の経済への影響は収まりそうだが、日本は依然「高関税」という大きな経済リスクに直面している。国難に向き合える政治家はいつ現れるのか>

米国の関税政策が二転三転、一方でパウエルFRB(米連邦準備理事会)議長への批判を強めるなど、トランプ米大統領の発言で、4月から世界の株式市場は揺れ動いてきた。

そして、6月21日にイランに対して米国が軍事攻撃に踏み出したことで中東地域の情勢は新たな局面に入り、トランプ大統領の決断が新たな火種になる可能性が浮上した。

米国の参戦による中東情勢の緊迫化が世界経済全体に影響するか否かは、2022年のロシア・ウクライナ紛争の時のように、エネルギー供給の減少で原油価格が急騰するかどうか次第である。

イランは長年の経済制裁で疲弊しており、軍事的にも劣勢にみえるが、同国が大規模な反撃を続けてホルムズ海峡の航海が難しくなれば、原油価格は高騰する。一方で、中国、ロシアなどがイランを表立って支援する動きもなく、孤立したイランからの軍事行動には限界があるようにみえる。

仮に、ホルムズ海峡の航海が止まれば、中東からのエネルギーに依存する日本を含めたアジア諸国が、まずはダメージを受けることになるだろう。米国はエネルギー輸出国ではあるが、関税引き上げと世界的な原油高が同時に起きれば、米経済へのダメージも免れない。トランプ大統領はイラン攻撃に深入りする意図はない模様である。

これらを踏まえると今の中東情勢の緊迫化が、2022年時のウクライナ侵攻と同等に世界経済のリスクを高める可能性は低いだろう。実際に、23日にはイランとイスラエルが停戦合意に至ったと早くも報じられており、世界経済、金融市場への影響は短期的に収まりそうである。

プロフィール

村上尚己

アセットマネジメントOne シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、証券会社、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に20年以上従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。『日本の正しい未来――世界一豊かになる条件』講談社α新書、など著書多数。最新刊は『円安の何が悪いのか?』フォレスト新書。

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