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アングル:長期金利2.0%が視野、ターミナルレートの目線上振れ

2025年12月04日(木)18時43分

 12月4日、円債市場で中期・長期債を起点とした金利上昇が続いている。2022年9月22日撮影(2025年 ロイター/Florence Lo)

Mariko Sakaguchi

[東京 4日 ロイター] - 円債市場で中期・長期債を起点とした金利上昇が続いている。高市早苗政権の財政政策を懸念した超長期金利の上昇圧力の影響に加え、植田和男日銀総裁のタカ派的な発言を契機にターミナルレート(利上げ最終到達点)予想が上振れたことが背景にある。長期金利は2%が視野に入っており、同水準で金利上昇が止まるかが目先の焦点になる。

<ロスカットの動き、金利リスクとれず>

この日の市場では、新発10年債利回りが1.935%と2007年7月以来の高水準となり、新発5年債利回りも1.410%と、08年6月以来の水準まで上昇、上昇基調に歯止めがかからなかった。

警戒されていた30年債入札は好調な結果となり、超長期ゾーンは金利低下に転じたが、5年債や10年債にその流れが波及していない。「投資家によるロスカットの動きがでている」(国内証券債券セールス担当)とされ、「あまりに速いピッチで金利上昇が進むため、どの水準で止まるか不透明だ」(同)との声が出ている。

急ピッチな金利上昇を受けて「市場参加者は金利リスクを取れない状況」(ニッセイ基礎研究所の金融調査室長、福本勇樹氏)という。

<ターミナルレート予想上振れ、円安も要因>

急ピッチな金利上昇は、植田日銀総裁のタカ派発言を受け、市場が予想するターミナルレートが切り上がったことが背景の一つとみられている。

オーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)の2年先1カ月フォワード金利はここにきて1.4%台まで上昇。従来の市場の見方に1回分(0.25%)の利上げが上乗せされた格好で「長期金利は1.950%まで上昇してもおかしくない」とニッセイ基礎研の福本氏はみる。

高市政権による財政拡張路線を受けた円安進行も止まらない。足元のドル/円は155円台。植田日銀総裁の発言をきっかけに一時154円台まで下落したものの、再び元の水準に戻してきている。

SMBC日興証券の金利・為替ストラテジスト、丸山凜途氏は、市場では12月に50bp(ベーシスポイント)の日米金利差縮小がほぼ織り込まれているにも関わらず「円高が進行しないというセオリーに反した動きが続いてる」との見方を示す。

円安是正のため「12月会合で日銀総裁は利上げの打ち止め感を出さないのではないか」(国内銀の運用担当)との見方も加わり、ターミナルレート予想の目線が切り上がった面もある。

<長期金利2.0%近辺で止まるか注目>

足元ではすでに長期金利の2%が視野に入ってきたとの見方が広がっている。「1.95%を超えたあたりから、含み損を抱えた市場参加者の売りが出始める可能性がある」とSBI証券のチーフ債券ストラテジスト、道家映二氏は指摘する。

2%を超えると節目となる水準も見当たらなくなる。日本国債の格下げリスクが意識されれば、海外勢による売りも加わり、売りが売りを呼ぶ可能性がでてくる。

一方、外債投資と比較しても「長期金利2%は投資妙味がある」(別の国内銀の運用担当)として、金利上昇ペースが落ち着いてくるにつれ「徐々に買いが入っていく」(同)との声も聞かれる。

日銀が0.75%まで政策金利を引き上げたとしても、次回の追加利上げに踏み切るまでは時間が空くとの見方が広がっているほか、将来的に1.5%まで政策金利を引き上げても、長期金利が2%の水準であれば大きな損失は生じないとの見立てが背景にある。

<政府のコミットメント>

日銀が利上げに踏み切った後は「高市政権による、財政に対するわかりやすいコミットメントが必要になってくる」とSMBC日興証の丸山氏は指摘する。来年度の予算編成を控え、財政出動が想定よりも小さい規模に収まれば、金利上昇圧力が和らぎ、円安進行も歯止めがかかっていくとみる。丸山氏は、それでも金利上昇が止まらない場合、日銀が臨時国債買い入れオペなどで対応するとの予想を示している。

(坂口茉莉子 編集:平田紀之 石田仁志)

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