アングル:好調スタートの米年末商戦、水面下で消費揺り戻しの兆しも
米国の年末商戦は、感謝祭時期にオンライン売上高が過去最高を記録し、好調なスタートを切った。写真はアマゾンの物流センター。12月1日、ニュージャージー州ロビンスビルで撮影(2025年 ロイター/Eduardo Munoz)
Nicholas P. Brown
[ニューヨーク 2日 ロイター] - 米国の年末商戦は、感謝祭時期にオンライン売上高が過去最高を記録し、好調なスタートを切った。しかし水面下では景気の弱さを示す兆候が出ており、今後の消費には揺り戻しが生じる可能性もある。
11月の消費者信頼感指数は再び低下した。それでもアドビ・アナリティクスの集計によると、米感謝祭からサイバーマンデーまでの5日間、いわゆるサイバーウィーク中のオンライン支出は過去最高の442億ドル(約6兆8510億円)に達した。
実店舗の売上高データはまだ入手できない。
消費分析会社コアサイトの世界調査責任者、ジョン・マーサー氏は、過去最高更新という数字は「少し割り引いて」見る必要があると指摘。関税が一因となってコストが上昇している上、富裕な消費者は「1年を通じて支出を控えてきた」と語った。
データを詳しく見ると、消費者がサイバー・ウィークに不安に満ちた行動を取っていた実態が浮かぶ。ターゲットとウォルマートでは、消費者が衝動買いを減らした。アドビによると、後払い決済サービス(BNPL)で短期の借金をする消費者が過去最高に上った。
アマゾン・ドット・コムなどの小売企業は電池や掃除用品といった日用品の値下げを拡大した。ニールセンIQの電子商取引(EC)部門ディレクター、ジャック・オリアリー氏によると、これは消費者が日用品を間に合わせるのにさえセールを探している状況だとみる。
市場調査会社カンターの調べでは、生活必需品を買う資金力があると答えた消費者の割合が先月4ポイント低下した。それでも、過去最低だった2023年の水準は大きく上回っている。
消費者分析会社シビックサイエンスが11月に行った調査では、3分の2以上の潜在的消費者が、関税は自身の買い物に影響し、プレゼントの購入を早めるか、量を減らすだろうと答えた。
今年の値下げ率は非常に大きく、消費者が通常より強い購買動機を必要としていることを示している。ペンシルベニア大ウォートン校のケント・スメッターズ経済学教授は「消費者心理は不安を反映し、行動は経済力を示している。不足分を埋めるのが値引きだ」と述べた。
<景気減速の可能性>
カンターの購買行動分析担当バイスプレジデント、ジュリー・クレイグ氏は、こうした行動は景気後退を意味するわけではないが、家計の健全性が「徐々に損なわれている」ことを示していると説明。急場をしのげるだけの貯蓄があると答える消費者の割合が、前年比で減少していることを示すカンターの調査に言及した。
RBCのアナリストは11月、関税コスト上昇を控えた駆け込み消費が数カ月続いた後、小売支出が横ばいとなったことを挙げ、低中所得層の消費者が「息切れしている」と報告した。
こうした「疲れ」の影響は、年末商戦シーズン後の数カ月間に顕在化しそうだと専門家は述べている。年明けには関税コスト、最近の政府機関閉鎖、それに伴う低所得者向け食料購入補助「フードスタンプ」(SNAP)の一時停止といったストレス要因の影響が、より直接的に表れる。クレイグ氏は「消費者は不安を募らせており、突発的に支出したとしても、それを埋め合わせるために後で支出を控えるという構図だ」と述べた。
消費調査会社サーカナの小売部門主席顧問、マーシャル・コーエン氏によると、支出に影響を与える可能性のある人員削減は、休暇シーズン直前は比較的少ないが、その後は増える傾向にある。
しかし全米小売業協会の首席エコノミスト、マーク・マシューズ氏はもっと楽観的だ。約5年にわたって消費者心理と実際の支出は乖離しており、支出が大幅に減ることはまれだと指摘。「消費者は節約のために低価格店に切り替え、落ち込む心をなだめている。しかし支出を止めることはしていない」と話した。





