ニュース速報
ワールド

アングル:好調スタートの米年末商戦、水面下で消費揺り戻しの兆しも

2025年12月04日(木)18時16分

 米国の年末商戦は、感謝祭時期にオンライン売上高が過去最高を記録し、好調なスタートを切った。写真はアマゾンの物流センター。12月1日、ニュージャージー州ロビンスビルで撮影(2025年 ロイター/Eduardo Munoz)

Nicholas P. Brown

[ニューヨーク 2日 ロイター] - 米国の年末商戦は、感謝祭時期にオンライン売上高が過去最高を記録し、好調なスタートを切った。しかし水面下では景気の弱さを示す兆候が出ており、今後の消費には揺り戻しが生じる可能性もある。

11月の消費者信頼感指数は再び低下した。それでもアドビ・アナリティクスの集計によると、米感謝祭からサイバーマンデーまでの5日間、いわゆるサイバーウィーク中のオンライン支出は過去最高の442億ドル(約6兆8510億円)に達した。

実店舗の売上高データはまだ入手できない。

消費分析会社コアサイトの世界調査責任者、ジョン・マーサー氏は、過去最高更新という数字は「少し割り引いて」見る必要があると指摘。関税が一因となってコストが上昇している上、富裕な消費者は「1年を通じて支出を控えてきた」と語った。

データを詳しく見ると、消費者がサイバー・ウィークに不安に満ちた行動を取っていた実態が浮かぶ。ターゲットとウォルマートでは、消費者が衝動買いを減らした。アドビによると、後払い決済サービス(BNPL)で短期の借金をする消費者が過去最高に上った。

アマゾン・ドット・コムなどの小売企業は電池や掃除用品といった日用品の値下げを拡大した。ニールセンIQの電子商取引(EC)部門ディレクター、ジャック・オリアリー氏によると、これは消費者が日用品を間に合わせるのにさえセールを探している状況だとみる。

市場調査会社カンターの調べでは、生活必需品を買う資金力があると答えた消費者の割合が先月4ポイント低下した。それでも、過去最低だった2023年の水準は大きく上回っている。

消費者分析会社シビックサイエンスが11月に行った調査では、3分の2以上の潜在的消費者が、関税は自身の買い物に影響し、プレゼントの購入を早めるか、量を減らすだろうと答えた。

今年の値下げ率は非常に大きく、消費者が通常より強い購買動機を必要としていることを示している。ペンシルベニア大ウォートン校のケント・スメッターズ経済学教授は「消費者心理は不安を反映し、行動は経済力を示している。不足分を埋めるのが値引きだ」と述べた。

<景気減速の可能性>

カンターの購買行動分析担当バイスプレジデント、ジュリー・クレイグ氏は、こうした行動は景気後退を意味するわけではないが、家計の健全性が「徐々に損なわれている」ことを示していると説明。急場をしのげるだけの貯蓄があると答える消費者の割合が、前年比で減少していることを示すカンターの調査に言及した。

RBCのアナリストは11月、関税コスト上昇を控えた駆け込み消費が数カ月続いた後、小売支出が横ばいとなったことを挙げ、低中所得層の消費者が「息切れしている」と報告した。

こうした「疲れ」の影響は、年末商戦シーズン後の数カ月間に顕在化しそうだと専門家は述べている。年明けには関税コスト、最近の政府機関閉鎖、それに伴う低所得者向け食料購入補助「フードスタンプ」(SNAP)の一時停止といったストレス要因の影響が、より直接的に表れる。クレイグ氏は「消費者は不安を募らせており、突発的に支出したとしても、それを埋め合わせるために後で支出を控えるという構図だ」と述べた。

消費調査会社サーカナの小売部門主席顧問、マーシャル・コーエン氏によると、支出に影響を与える可能性のある人員削減は、休暇シーズン直前は比較的少ないが、その後は増える傾向にある。

しかし全米小売業協会の首席エコノミスト、マーク・マシューズ氏はもっと楽観的だ。約5年にわたって消費者心理と実際の支出は乖離しており、支出が大幅に減ることはまれだと指摘。「消費者は節約のために低価格店に切り替え、落ち込む心をなだめている。しかし支出を止めることはしていない」と話した。

ロイター
Copyright (C) 2025 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:好調スタートの米年末商戦、水面下で消費揺

ワールド

トルコ、ロ・ウにエネインフラの安全確保要請 黒海で

ワールド

マクロン氏、中国主席と会談 地政学・貿易・環境で協

ワールド

トルコ、ロシア産ガス契約を1年延長 対米投資も検討
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与し、名誉ある「キーパー」に任命された日本人
  • 3
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 7
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 8
    台湾に最も近い在日米軍嘉手納基地で滑走路の迅速復…
  • 9
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 10
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 7
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 8
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中