コラム

トランプ再登板・関税引き上げで米経済はどうなるか...「日本経済には追い風」と言える理由

2024年11月12日(火)18時50分

一方で、トランプ政権と議会を支配する共和党は、法人税などの減税で成長率を支える政策を打ち出す見込みである。トランプ減税の延長は追加的な減税ではなく景気刺激策にはならない。それ以外のトランプ氏が提唱する拡張的な財政政策も全ては行われずに、GDP対比0.8%程度に相当する追加的な財政政策を繰り出すと予想される。

つまり、拡張的な財政政策による押し上げ効果と、関税引き上げによる押し下げ効果がほぼ相殺するため、経済全体ではGDP全体に及ぼす影響は、0.2%と若干のプラスになるだろう。トランプ政権による財政政策で、経済成長率やインフレ率が大きく押し上げられないし、財政赤字が大きく拡大するとは予想されない。

一方で、減税政策が選択されることが示すように、環境政策の分野で介入的な政策が目立つ民主党政権とは対照的に、トランプ政権は規制緩和など民間の経済活動を支援する政策を重視するだろう。

金融業などへの規制緩和、国内エネルギー採掘の促進など、関連する産業における成長期待は高まり易く、今後も最高値更新を続ける株高を下支えし続けるだろう。

トランプ政権の経済政策は、米国の経済成長率に若干のプラスに作用するので、2025年以降も2%を上回る底堅い経済成長が続くと予想される(一方で、中国などは関税引き上げの悪影響を受けて経済減速がより鮮明になる。米経済が堅調でも、世界経済全体では若干マイナスの影響が及ぶ可能性が高いが、この点は別の機会に議論したい)。

プロフィール

村上尚己

アセットマネジメントOne シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、証券会社、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に20年以上従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。『日本の正しい未来――世界一豊かになる条件』講談社α新書、など著書多数。最新刊は『円安の何が悪いのか?』フォレスト新書。

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