最新記事
エネルギー政策

再生可能ブーム、トランプ新政権でも急減速の可能性低く

2024年11月7日(木)13時45分
テキサス州フォートストックトン近郊

次期米大統領にトランプ前大統領が返り咲くことで、米国のエネルギー政策は石油・ガス生産の最大化に焦点が絞られる。気候変動との闘いからは遠ざかるだろうが、米国の再生可能エネルギーのブームが劇的に減速する可能性は低そうだ。テキサス州フォートストックトン近郊で昨年3月撮影(2024年 ロイター/Bing Guan)

次期米大統領にトランプ前大統領が返り咲くことで、米国のエネルギー政策は石油・ガス生産の最大化に焦点が絞られる。気候変動との闘いからは遠ざかるだろうが、米国の再生可能エネルギーのブームが劇的に減速する可能性は低そうだ。

トランプ次期政権下での後退に対する投資家の懸念から、クリーンエネルギー関連の株価は6日に急落した。太陽光発電を手がける企業群の指標となるMACグローバル・ソーラー・エナジー・インデックスは日中の取引で10%下落し、再生可能エネルギー事業開発・所有で首位のネクストエラ・エナジー・パートナーズの株価は6.2%下げた。


 

バイデン現政権下に施行された太陽光や風力などのクリーンエネルギー事業に10年間の有利な補助金を支給する法律は共和党が強い州から支持を受けているため廃止は不可能に近く、トランプ氏に残された他の手段による影響も限定的だとアナリストらは指摘する。

ヒューストン大のエネルギー研究員、エド・ハーズ氏は「トランプ氏はこの(クリーンエネルギーへの)移行を遅らせることはできないと思う」とし、「既にかなり進行中だ」と説明した。

エネルギー省によると、太陽光や風力などの再生可能エネルギーは送電網の中で最も急成長している分野になっており、連邦政府による税控除、各州の再生可能エネルギー義務化、技術の進歩によるコスト低減が原動力となっている。

バイデン大統領は気候変動対策で2035年までに電力部門の脱炭素化を目指す広範な取り組みの一環として、数十億ドルの太陽光・風力補助金を10年間保証するインフレ抑制法(IRA)を22年に成立させた。

トランプ氏は大統領選前にIRAについて金がかかり過ぎると非難し、法律によって割り当てられた未使用の資金をすべて取り消すと約束した。この脅し文句が現実になれば、米国のクリーンエネルギーブームに冷水を浴びせる可能性がある。

しかし、IRAの廃止を決議するには、太陽光発電施設や風力発電所などのIRA関連投資の恩恵を受けた州の選出議員を含めて議会で賛成を得る必要がある。

SDGs
2100年には「寿司」がなくなる?...斎藤佑樹×佐座槙苗と学ぶ「サステナビリティ」 スポーツ界にも危機が迫る!?
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

FRB、近い将来の利下げなお可能 政策「やや引き締

ワールド

米国、和平合意迫るためウクライナに圧力 情報・武器

ビジネス

ユーロ圏の成長は予想上回る、金利水準は適切=ECB

ワールド

米「ゴールデンドーム」計画、政府閉鎖などで大幅遅延
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    中国の新空母「福建」の力は如何ほどか? 空母3隻体制で世界の海洋秩序を塗り替えられる?
  • 3
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワイトカラー」は大量に人余り...変わる日本の職業選択
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ロシアのウクライナ侵攻、「地球規模の被害」を生ん…
  • 6
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 7
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 10
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中