日銀審議委員に野口教授提示で、菅政権のマクロ経済政策への懸念はかなり低下した

金融財政政策を間違えると、政権運営に大きなダメージが及ぶ...... REUTERS/Issei Kato/
<日本銀行の新たな審議委員として、野口旭専修大学教授を任用する人事案が国会に提示された意味とは......>
政府は、1月20日に日本銀行の新たな審議委員として、野口旭専修大学教授を任用する人事案を国会に提示した。野口教授は、ニューズウィーク日本版「ケイザイを読み解く」で、骨太の経済コラムを書かれており、ご存知の読者も少なくないだろう。また、当該コラムなどに依拠して、「アベノミクスが変えた日本経済」が2018年に出版されており、これらに金融財政政策に関する野口教授の考え方が明確に示されている。
日銀の金融緩和は手緩い、という野口教授の主張
野口教授の日本経済に対する考えを、筆者なりに総括すると、インフレ率がゼロ以下まで低下し、そして不完全雇用・総需要不足の日本では金融財政政策を徹底する必要がある、である。これは、標準的な経済理論に基づいた考えと筆者は位置付けている。
2000年代以降に出版された野口教授の書籍のほとんどを筆者は拝読しているが、野口教授は長年にわたり意欲的に経済政策を論じてきた。多くはマクロ経済学の良質なテキストであり、経済メディア等で見られる俗説を批判する論争的な主張も中には多い。経済メディアで見かける俗説の誤りが野口教授の論説で解説されており、これらの教えによって、経済、金融市場に関するリテラシーを高めることができたと筆者は考えている。
例えば、日本経済は1998年以降本格的なデフレ局面に入り2000年代中頃まで、デフレ局面の日本銀行の金融政策は論争のテーマになっていた。デフレへの対応策として、政策金利がゼロとなっても量的金融緩和の強化を徹底する、という中央銀行の対応は今やほとんどの先進国にとって常識である。
ただ、デフレの深刻化に直面して、2001年に日本銀行は量的金融緩和政策を始めたのだが、一方で当時は弊害が大きいなどの根拠が曖昧な反対論が多くの論者から唱えられていた。野口教授は、日本銀行の金融緩和は手緩いので、アグレッシブに緩和を行うべきとの主張を示し、日本銀行の消極的な姿勢を終始批判していた。
また、量的金融緩和政策に加えて、2000年代に先進国の中央銀行の潮流となっていった2%インフレ目標についても、日本銀行は早期に導入すべきと野口教授は主張した。量的金融緩和同様に、今や、ほとんどの先進国の中央銀行が2%程度のインフレ目標を導入しており常態化している。
金融政策の大転換をアカデミックの立場から支える
ただ、かつて、日本銀行はインフレ目標導入に長年抵抗し続けた。米欧の中銀が2%インフレ目標を正式に導入した後に、安倍政権誕生を経た2013年に日本銀行は政府との共同声明において、2%インフレ目標をようやく明確にコミットした。2%インフレ目標の約束と黒田執行部による量的金融緩和の強化によって、日本銀行は世界標準の中央銀行に変わった。この認識が金融市場で広がったことで、その後の円高修正と株高をもたらし、日本経済はデフレ克服の道筋が始まったと評価できる。
日本銀行による2%インフレ目標導入が遅れたことには、いくつかの要因があるだろう。先述したが、野口教授らが批判対象としていた2%インフレ目標導入などへの「懐疑論」が、経済学者や日本銀行の職員から示されたことが影響したとみられる。今から振り返ると、これらの主張の多くは些細でかつ根拠が薄い議論が多い。官僚組織の無謬性の弊害なのか偏ったイデオロギーがもたらしたのか、これらを鋭く批判する論客だった野口教授は、2013年以降の日本銀行の金融政策の大転換を、アカデミックの立場から支える大きな功績を果たしたと筆者は考えている。
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