コラム

日銀審議委員に野口教授提示で、菅政権のマクロ経済政策への懸念はかなり低下した

2021年01月28日(木)12時15分

菅政権のマクロ経済政策にやや不安を覚えていたが

国民の高い期待を背負って2020年9月に誕生した菅政権は、新型コロナ問題の悪化に直面して支持率がやや低下している。菅首相は、安倍政権の経済政策を引き継ぐと明言しており、他の首相候補と比べて菅首相には強く期待できると評価していた。

ただ、根拠があいまいな俗説を主張したり、あるいは官僚組織の代弁者として振る舞う論者を含めて、菅首相は幅広い声に耳を傾けていた。この行動をみて、菅政権は十分なマクロ経済政策を運営していくのか、筆者は正直やや不安を覚えていた。デフレ克服と経済成長を重視せずに、国民生活よりも官僚組織の意向に配慮するのではないかとの疑念である。

金融財政政策を間違えると、2009年からの民主党政権が直面したように、政権運営に大きなダメージが及ぶ。安倍政権は民主党の失敗を反面教師としながら、安倍政権は戦後最長の長期政権となった。近年の経緯を政治の現場で目の当たりにした菅首相は、金融財政政策の重要性を深く認識したのだろう。

日本経済の最大問題はデフレと低成長にあり、この問題に金融財政政策は決定的に影響する。これを理解しているから、恐らく官僚組織の意向に沿わないとみられる野口教授の日銀審議委員の任用人事が実現したのだろう。こうした妥当な経済政策が続けば、菅首相は長きにわたり政権を維持するのは可能だと筆者は考えている。

プロフィール

村上尚己

アセットマネジメントOne シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、証券会社、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に20年以上従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。『日本の正しい未来――世界一豊かになる条件』講談社α新書、など著書多数。最新刊は『円安の何が悪いのか?』フォレスト新書。

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