コラム

揺れる米独関係

2017年06月02日(金)14時50分

SPDは6月25日の党大会で選挙マニフェストを採択する予定であるが、マニフェストに書かれている外交安全保障に関わる部分で特徴的なのは、欧州防衛協力の強化による防衛支出の効率化であり、大西洋同盟を尊重し防衛能力の向上を謳いつつも、全く不必要で非現実的な防衛費の増額には反対という主張である。NATOの2%目標は現在の予算のほぼ倍となり、そのようなことはSPD政権の下ではあり得ないと書かれている。この部分についてはCDU/CSUはより慎重な言い回しをするであろうが、大連立政権が継続する場合、SPDの姿勢も当然ドイツ外交に強く影響することになる。

SPDのマニフェストの中にはアメリカに対する言及もわずかながら出てくるが、アメリカを誰が統治していようと、ヨーロッパとアメリカは最も緊密なパートナーであって、自由と民主主義という価値共同体に基づくことが確認されている。しかし同時に、安全保障と平和を将来的には自らで達成しなければならないとも指摘しており、ヨーロッパはより自律的に将来を見据えなければならないとされている。この表現は冒頭のメルケル首相の発言と軌を一にするものであり、その意味でドイツ外交の方向性が揺らぐことはなさそうである。

プロフィール

森井裕一

東京大学大学院総合文化研究科教授。群馬県生まれ。琉球大学講師、筑波大学講師などを経て2000年に東京大学大学院総合文化研究科助教授、2007年准教授。2015年から教授。専門はドイツ政治、EUの政治、国際政治学。主著に、『現代ドイツの外交と政治』(信山社、2008年)、『ドイツの歴史を知るための50章』(編著、明石書店、2016年)『ヨーロッパの政治経済・入門』(編著、有斐閣、2012年)『地域統合とグローバル秩序-ヨーロッパと日本・アジア』(編著、信山社、2010年)など。

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