コラム

クマル・リテシュ CYBER × INTEL

トランプ関税で「同盟国間のサイバースパイ活動」が加速...信頼の「静かな崩壊」が生むリスクとは

2025年07月16日（水）17時17分

不快ではあるが、ある程度は受け入れられている

2014年、ドイツの連邦情報局（BND）は、情報共有協定を通じて、欧州企業に対するNSAのスパイ活動を助けていたことが判明している。一方で、トルコ、インド、韓国などの国々は、時に米軍、外交、商業上の利益を標的としたサイバー作戦を維持している。例えば、トルコの情報機関は、米軍とトルコ軍が利用するトルコのインジルリク空軍基地でのアメリカの作戦を監視していたと言われている。

現代の地政学的な状況では、国家がサイバー能力を持つのは不可欠なため、同盟国同士のスパイ活動でも、不快ではあるものの、ある程度は結果的に受け入れられている。

経済ナショナリズムの台頭、外交関係のほころび、戦略的競争の激化という背景がある中では、サイバー攻撃の規模と洗練度が増す可能性があるとの警告も聞かれる。

最近のトランプ政権による貿易交渉でも、サイバー戦略を垣間見ることができる。欧州およびアジアの国々は、友好的な貿易協議でさえ監視の対象となる可能性があるという前提で、より堅牢なサイバーセキュリティ対策を採用している。EU（欧州連合）は、「デジタル主権」に関する議論を再燃させ、アメリカのクラウドサービスへの依存を減らす提案もしている。

一方、韓国などは、政府や企業ネットワークに密かに埋め込まれている可能性があるアメリカのサイバーインプラント（不正プログラム）を検出して削除するための、内部レビューとセキュリティ監査を強化している。

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プロフィール

クマル・リテシュ

Kumar Ritesh　イギリスのMI6（秘密情報部）で、サイバーインテリジェンスと対テロ部門の責任者として、サイバー戦の最前線で勤務。IBM研究所やコンサル会社PwCを経て、世界最大の鉱業会社BHPのサイバーセキュリティ最高責任者（CISO）を歴任。現在は、シンガポールに拠点を置くサイバーセキュリティ会社CYFIRMA（サイファーマ）の創設者兼CEOで、日本（東京都千代田区）、APAC（アジア太平洋）、EMEA（欧州・中東・アフリカ）、アメリカでビジネスを展開している。公共部門と民間部門の両方で深いサイバーセキュリティの専門知識をもち、日本のサイバーセキュリティ環境の強化を目標のひとつに掲げている。
twitter.com/riteshcyber

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