コラム

菅政権「9月5日のパラ閉会後解散」という見立ての説得力

2021年05月04日(火)20時39分

小池都知事は「乾坤一擲」の勝負に出るか

もう1つ、菅首相の解散総選挙戦略に絡むのが、小池百合子東京都知事の動きだ。総選挙で自民党が勝利し菅首相が再選を果たすと、菅氏の総裁任期は2024年9月までとなる。小池氏の都知事としての任期は2024年7月までだが、仮に初の女性首相の座を狙うのであれば、今回の菅再選を座視してポスト菅を待つ余裕があるか。

小池知事は実はいま、五輪開催都市の首長として「コロナ感染拡大を理由とする五輪中止」をIOCに申し出るカードを有している。開催都市契約では五輪中止を決定する権限はIOCに留保されている(66条)。したがって知事による中止要請はあくまでも「政治的デモンストレーション」に過ぎないが、「中止要請にも関わらず菅政権が五輪開催を強行した」と国民に印象づけることは可能であり、ワクチン接種が遅々として進まないコロナ禍の閉塞状況の中で、一定の支持を集めることも出来よう。

小池知事が太いパイプを有している二階幹事長も4月15日、五輪を「スパッとやめる」という開催中止の可能性に言及している。カードの使い方を誤ると、小池知事は返り血を浴びるだけでなく政治的に立ち直れないダメージを負う可能性もあるが、今回の安倍前首相の支持表明で「菅再選」の流れが固まりつつある現状を変えるには起死回生のカードを切るしかない――かもしれない。

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プロフィール

北島 純

社会構想⼤学院⼤学教授
東京⼤学法学部卒業、九州大学大学院法務学府修了。駐日デンマーク大使館上席戦略担当官を経て、現在、経済社会システム総合研究所(IESS)客員研究主幹及び経営倫理実践研究センター(BERC)主任研究員を兼務。専門は政治過程論、コンプライアンス、情報戦略。最近の論考に「伝統文化の「盗用」と文化デューデリジェンス ―広告をはじめとする表現活動において「文化の盗用」非難が惹起される蓋然性を事前精査する基準定立の試み―」(社会構想研究第4巻1号、2022)等がある。
Twitter: @kitajimajun

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