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秘蔵っ子辞任「縁故主義」のブーメランが菅政権に突き刺さる
酒池肉林の宴で東北新社が狙った「獲物」
しかし、いったいどれだけ食べ、どんな酒を飲んだら、一人あたり7万円を超える接待になるのか。「7万円を超す接待を受けて平気な公務員の感覚が信じられない」という声もあがっている。
「贅沢過ぎる接待」という意味では、「酒池肉林」という言葉を想起した人がいるかもしれない。酒池肉林とは、司馬遷『史記』殷本紀にある「酒をもって池と為し、肉を縣けて林と為し」から来た言葉で、殷の暴君・紂王が、池をなすような大量の酒と林のようにぶら下がる干し肉が供される「豪奢の宴」を催したことに由来する故事だ。
民間企業では、接待交際費の扱いはたいへん厳しい。中小企業であれば、接待交際費として損金算入できる額は会社として800万円が上限であり、飲食を伴う打ち合わせを「会議費」として経費算入できるのは5000円までだ。今どき、7万円を超える接待を許す企業が日本でどれだけあるだろうか。
東北新社側としては、7万円を超えるコストを費やしても、行いたい重要な接待だったのかもしれない。しかし、「酒池肉林」感の漂う今回の接待は、コロナ禍で窮乏生活を強いられている庶民からすると、およそ普通の生活感覚からはかけ離れているものだ。厳しい批判は免れない。
致命的だったのは、接待の場に、総務省から許認可(衛星放送事業者としての認定)を受けている子会社・東北新社メディアサービスの社長が同席していたことだ。これは、国家公務員倫理規程が供応接待を禁じている「利害関係者」そのもので、官僚側が自腹で参加していない限り、アウトだ。
コンプライアンス軽視の社内文化
長男は接待の当時、親会社である東北新社の部長職であると同時に、東北新社メディアサービスの取締役でもあった(同取締役を退任したのは2020年6月26日。なお別の関連会社である株式会社囲碁将棋チャンネルの取締役に2020年3月30日付で就任している)。
菅首相は2月22日の予算委員会で「長男が入社する時、総務省との関係については距離を置いて付き合うように言った」と答弁している。この言葉が活かされていれば、接待自体の是非は百歩譲ったとして、例えば直接的な利害関係者である長男ら東北新社メディアサービスの2人は「会食が始まったら離席する」といった対応が取り得たかもしれない。しかし、東北新社側による一連の接待攻勢の中で、感覚が麻痺していたのだろうか、そうした対応は取られなかった。
東北新社側は2月26日付けで社内処分を発表し、本社の社長以下、今回の接待に参加した4人全員が退任・異動になった。事実上の引責処分で、こちらも7万円接待が高くついた形だ。コンプライアンスを軽視する社内文化をどう刷新していくか、企業として容易でない課題が突きつけられている。
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