コラム
欧州インサイドReport 木村正人
欧州インサイドReport 木村正人

「吐き気がした...」性被害から子供たちを守る、「セックスワーカー保護」で成果を上げる英国の試み

<小学生の女の子のふりをするよう頼む男、携帯に保存した児童虐待の写真を見せる男......。性産業従事者との信頼を深め、児童の性的搾取に関す

2025.05.08
欧州インサイドReport 木村正人

ついに「財政規律の重視」を捨てたドイツ...政治・経済の「危機的状況」を新政権は立て直せるか?

<2年連続の景気後退に陥り、政治の面では連立崩壊、極右躍進と苦しむ「欧州の病人」ドイツ。新政権は財政均衡の「伝統」をアップデートできるか>

2025.05.04
欧州インサイドReport 木村正人

イギリス統一地方選で二大政党が大敗...「英政界の中心」ファラージ氏がここまで「成り上がれた」ワケ

<「天才キャンペイナー」ナイジェル・ファラージを中心とした混沌の渦に飲み込まれつつある英国政治。地方選では「改革英国党」が大幅に議席を増やして躍進した> [ロンドン発]5月1日、イングランド24地方議会の1641議席、6市長を選ぶ英統一地方選と下院議員の補欠選挙が行われた。1世紀にわたって政権を交代してきた労働党と保守党の二大政党が大きく議席を減らし、多党制時代の始まりを予感させた。 台風の目は欧州連合(EU)離脱を主導したナイジェル・ファラージ氏のワンマン政党、改革英国党。2日午前9時時点の開票結果は改革英国党79議席増、昨年の総選挙で地滑り的勝利を収めた労働党13議席減、巻き返しを期す保守党62議席減。改革英国党はわずか6票差で労働党を退けて補欠選挙を制し、市長選でも初めて勝利した。 ファラージ氏は政治家というより毒舌の天才キャンペイナー。ドナルド・トランプ米大統領とも気脈を通じる反移民ポピュリストだ。昨年の政権交代も立役者はキア・スターマー首相(労働党)ではなく、保守党の票を分裂させたファラージ氏だった。 地方議員ネットワークの構築が課題 英国独立党(UKIP)、EU離脱(ブレグジット)党を通して総選挙に7回も落選。昨年ようやく初当選したファラージ氏は「保守党の終わりの始まりだ。次の狙いは労働党だ」と大胆不敵に宣言した。集票マシンとして地方議員ネットワークを構築するのが今回の課題だった。 ===== 「湿った雑巾のよう」とEU大統領をこき下ろす --> 英国流マスタード色ズボンとツイードのジャケット。昼間からパブでパイント(568ミリリットル)グラスのエール(地ビール)を飲み、煙草をくゆらす。赤ら顔でガハハと豪快に笑ってEU離脱を草の根に説いて回る。ファラージ氏のEU離脱貫徹と移民規制を支持する声は根強い。 勤勉なスターマー首相、超エリートのリシ・スナク前首相(保守党)より「政界の道化師」と呼ばれるボリス・ジョンソン元首相(同)に近い。ファラージ氏は裕福な家庭に生まれ、大学に行く代わりに商品相場のトレーダーになった。 「湿った雑巾のようなカリスマ性」とEU大統領をこき下ろす 14歳で保守党に入党するも1992年、ジョン・メージャー首相がEU創設を定めたマーストリヒト条約に署名したことに嫌気が差し、UKIPに加わった。交通事故や病気で生死をさまよい、2010年総選挙では横断幕が小型機の尾翼に絡まって墜落、肺に穴が空く瀕死の重傷を負った。 2番目の妻と別居中で、フランス人の女性政治家と交際を続けている。ベルギーのヘルマン・ファンロンパイ元首相がEU大統領(首脳会議の常任議長)に就任すると「湿った雑巾のようなカリスマ性を持ち、低級な銀行員のような外見」とこき下ろした。 ファラージ氏はほぼすべての選挙区で候補者を立て、どの政党よりも多くの候補者を擁立。次期総選挙を念頭に自由民主党の統一地方選戦略を模倣し、動員力を強化しようとしている。スポンサーは富裕層への優遇税制を期待するテクノロジー投資家や実業家、保守党の大口寄付者だ。 ===== 二大政党制は「今後4年間で挑戦を受けることになる」 --> 二大政党制は「今後4年間で挑戦を受けることになる」 ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)のサラ・ホボルト教授(英国政治)は「一般的に有権者は政党や政治指導者に対して不満を抱えており、ポピュリスト政党の台頭を招く傾向がある。労働党支持者もスターマー政権の実績を認めていない」と分析する。 不満の理由は生活費の高騰、住宅購入の困難さ、貧困、不平等などだ。多くは生活費の問題で、有権者の一部は「自分は裕福ではない」と感じている。現在の労働党政権はこれらの問題に対処していないとみなされている。特に改革英国党の支持者が重要視するのは移民問題だ。 英国伝統の二大政党制の終焉について「今後4年間で挑戦を受けることになるが、まだ早いかもしれない。それが今回これほどメディアの注目を集めている理由だ。今回の統一地方選が二大政党制を終わらせるわけではないが、今後数年間でそれが起こる可能性はある」と語った。 LSEのトニー・トラバース教授は「1955、59年の総選挙で保守党と労働党の合計得票率は93%を超えていた。しかし昨年の総選挙では57%と長期衰退が続く。2つのブロックに分かれる可能性もあるが現時点では不明だ。目を離せない変化の兆候が芽生えている段階と言える」という。

2025.05.02
欧州インサイドReport 木村正人

スペイン、ポルトガル、南仏「大停電」の原因は「再エネへの移行」?サイバー攻撃めぐるデマも

<交通、航空、通信、病院、銀行など社会インフラが大混乱し、緊急事態も宣言された大停電の原因をめぐり、「ロシアや北朝鮮の攻撃」といった偽情報も

2025.04.30
欧州インサイドReport 木村正人

高まる「トランプ的」ローマ教皇の待望論...改革派フランシスコ教皇への「反発のマグマ」が噴出か

<自分で手荷物を持ち、トレイを運んだローマ教皇フランシスコが死去。新教皇選出選挙コンクラーベに向け、カトリック内部でくすぶっていた保守派の反

2025.04.24
欧州インサイドReport 木村正人

英防衛メーカーが砲弾生産を「16倍に増産」で起きること...「戦時体制」ロシアへの備えの本気度

<英国を代表する防衛メーカー「BAEシステムズ」が、爆薬生産能力を大幅に拡大するとの情報。敵国による攻撃を想定して新生産拠点は3つに分散 す

2025.04.22
欧州インサイドReport 木村正人

ロシアの戦略戦争に「中国が加担している」...ゼレンスキー大統領の「中国糾弾」の計は奏功するのか

<ウクライナのゼレンスキー大統領は「中国がロシア国内で一部の武器生産に関与している」として、中国企業3社を制裁リストに加えるなど批判を強めて

2025.04.19
欧州インサイドReport 木村正人

欧州だけで「プーチンの抑え込み」は可能か...「アメリカ抜き」で進むウクライナ平和維持部隊計画

<アメリカが当てにできない状況となるなか、ロシアとの和平が実現した後には、英軍がウクライナに5年間駐留するという計画を検討しているとの報道が

2025.04.11
欧州インサイドReport 木村正人

フランス極右ルペン氏、「有罪判決」で大統領選に出馬禁止へ...それでも「国民連合」人気は衰えず

<支持率34~37%と首位に立つマリーヌ・ルペンに、公金不正流用財で禁錮4年と被選挙権停止5年の判決。本人は「民主主義の否定を受け入れるつも

2025.04.02
欧州インサイドReport 木村正人

上手く演奏するか、「ガス室送り」か...文字通り「音楽に命を懸けた」アウシュビッツの女性オーケストラ

<ユダヤ民族を絶滅させる「不妊化」の人体実験を進めるナチスに対し、看守やナチス幹部のために演奏するオーケストラはユダヤ女性が生き延びる数少な

2025.03.28
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

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