コラム

「化石燃料からの脱却」ロードマップ、COP30議長国ブラジル提案に足りなかったもの...日本は慎重

2025年11月21日(金)19時52分

化石燃料の「使用停止・段階的廃止」を明記せず「依存の克服」というあいまいな表現にとどまっているため、市民社会や環境団体から「弱すぎる」と批判が出ている。「ロードマップを作る」こと自体が目的化して「実際に化石燃料を減らす」措置が明確になっていない。

英独が主導、コロンビアが産油国として参加した「脱化石燃料ロードマップ」支持連合も正式に発足した。ブラジル提案を歓迎する一方で「明確なスケジュール、期限、マイルストーンを文書に入れなければ意味がない」と具体性を要求している。

化石燃料の「段階的廃止」具体化への政治的気運

他に参加したのは欧州連合(EU)加盟国、太平洋島嶼国、アフリカ、南米の複数国、アジアのバングラデシュ、ネパールなど気候脆弱国で支持国は84カ国に達した。「段階的廃止」を具体化しようという政治的気運が一気に強まった。

「化石燃料からの移行は不可避。期限のないロードマップは地図ではなく願望に過ぎない」(EU)、「ドバイのCOP28で約束した 『化石燃料からの脱却』 を今年ベレンで実行段階に移す必要がある。タイムラインは不可欠だ」(英国)という。

コロンビアは日量約100万バレルの産油国で、通常なら「段階的廃止」に反対する側だ。しかし「化石燃料の段階的廃止について明確なスケジュールを支持する」と賛成に回った。「産油国ブロック」の一角が崩れた格好だ。

段階的廃止を拒否する米国は不在。EUは反動でブラジル提案の強化を求める。AOSIS(小島嶼国連合)は「タイムラインがなければパリ協定の1.5度目標は死ぬ。これはわれわれにとって生死の問題」と訴えた。化石燃料と森林を同時に議論するブラジルの戦略も奏功している。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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