コラム

「日本の技術は最前線にいる」と専門家...CO2を「回収・貯留・有効利用」するCCUS技術に環境団体は反発も

2023年12月16日(土)14時39分

──日本は「今日の化石賞」の常連になりました。日本政府は化石燃料と水素やアンモニアの混焼を提唱しています。CCS/CCUSと混焼のどちらの方がいいと思いますか。

「日本はまだ化石燃料をたくさん使っている。日本は今後も化石燃料を使い続けるだろう。アンモニアや水素、炭素を含まない燃料を使うという約束に加えて、日本は化石燃料を使い続けることで発生する二酸化炭素を安全かつ恒久的に処分するべきだ」

「回収と貯留だ。日本にはその機会がいくつかある。化石燃料を供給する日本の企業に炭素の引き取り義務という原則を導入すれば、日本は一夜にして世界の気候変動リーダーになれる。とても簡単な法律だ。日本では化石燃料の生産はあまり行われていない。だから輸入に頼るしかない。輸入したいのであれば発生する二酸化炭素の一部を取り除かなければならない」

「日本は化石燃料の多くを中東から輸入している。二酸化炭素の一部を中東で処理しても構わないから燃料が輸送される前に二酸化炭素を処理してほしいということも選択肢の一つになるかもしれない。これは非常に興味深い展開だ。おそらく最も低コストの方法だろう。中東の多くの貿易相手国が興味を持つだろう」

──三菱重工グループのCCUSについてどう評価しますか。

「日本企業はCCS/CCUS技術の最前線にいる。この技術の迅速な展開に向けた真の世界的な後押しを望んでいるはずだ。今のところ、この技術の普及は政府がお金を出してくれるのを待っているという事実によって制限されている」

「しかし化石燃料産業が製品を販売し続けたいのであればCCSを導入しなければならないというライセンス条件を付ければCCS技術の導入は爆発的に伸びるだろう」

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プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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