コラム

「日本の技術は最前線にいる」と専門家...CO2を「回収・貯留・有効利用」するCCUS技術に環境団体は反発も

2023年12月16日(土)14時39分

オックスフォード大学のマイルズ・アレン教授

オックスフォード大学のマイルズ・アレン教授

──COP28合意に「CCUS」が明記されましたが、環境団体の反発もありますね。

アレン教授「気候問題は廃棄物処理の問題になっている。私たちは二酸化炭素を廃棄物と考えなければならない。廃棄物の量を減らすだけでなく、排出される廃棄物を安全かつ責任ある方法で処理する必要がある。現在のところ二酸化炭素を大気中に放出することなく永久に処分する唯一の方法は二酸化炭素を回収して地下に注入することだ」

「これをCCSと呼ぶ。COP28合意がこの技術について言及したのを見てとてもうれしく思う。化石燃料の使用による二酸化炭素の排出を減らす努力をせず、二酸化炭素の回収技術だけに頼れば、貯蔵できる量や大気中に排出できる量を超える二酸化炭素を発生させてしまう危険性がある」

「私たちは短期的にはその両方を行う必要がある。気候への影響を減らす主な方法は二酸化炭素の排出量を減らすことだ。それが最も早くできることだ。メタンについても対策を講じることができる。自然を利用した解決策を講じることもできる。しかし私たちがやらなければならない主なことは短期的には二酸化炭素の生産量を減らすことだ」

「しかし二酸化炭素の回収と貯留は絶対に必要だ。現在二酸化炭素を生産している割合をどんなに減らそうとしても過剰に発生してしまう。私たちは二酸化炭素を処理する世界的な産業を構築しなければならない。二酸化炭素の回収と貯留に今、投資するということだ」

「二酸化炭素の排出量を減らすことと回収・貯留技術を確立すること、その両方を行うことが非常に重要だ。この両方への投資を確保する方法は二酸化炭素の削減と化石燃料の継続的な使用を結びつけることだ。両者は別個のものではない」

――そのための資金はどうするのですか。

「まだ化石燃料を生産、使用しているのであれば、まだ化石燃料で儲けているのであれば、安全で恒久的な二酸化炭素処理を拡大する責任がある。このつながりを人々の心に定着させる必要がある。将来、化石燃料の利用と、発生した二酸化炭素の責任ある処理との間におそらく政策的なつながりができるはずだ」

――CCSとCCUSの現状を教えてください。

「現在、私たちは年間約4000万トンの二酸化炭素を地中に貯留している。この数字はあまり変わっていない。しかし30年までに地中に貯留する二酸化炭素を年間10億トンまで増やすことを約束している。これは非常に大きな増加だ。約6年で25倍になる。私たちにはこの技術が必要だ。再エネは3倍、炭素回収・貯留は実に25倍だ」

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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