コラム

燃えるアマゾン、融けるグリーンランド 2人のデタラメ大統領が地球を破壊する

2019年08月27日(火)15時30分

地球を破壊する2人の「トランプ」(左はブラジルのボルソナロ大統領) Carlos Barria-REUTERS

[ロンドン発]わが道を行くドナルド・トランプ米大統領に「合意なき離脱」に突き進むボリス・ジョンソン英首相が加わった先進7カ国(G7)首脳会議(ビアリッツ・サミット)。ホスト役を務めたエマニュエル・マクロン仏大統領がフラストレーションを爆発させた。

トランプ氏やジョンソン氏にではなく、「地球の肺」であるアマゾン熱帯雨林の火災を放置するブラジルのジャイル・メシアス・ボルソナロ大統領に対してだ。

マクロン氏は記者会見で「ボルソナロ氏は私の妻に対して非常に無礼なことを言った。何と言ったら良いのだろう。悲しい。まず彼に対して、そしてブラジル国民に対して。ブラジルの人たちに敬意と尊敬の念を抱いている。ブラジル国民が正しい仕事をする大統領を持つことを期待している」と批判した。

G7はアマゾンの火災を抑えるため2000万ドル(約21億2200万円)の資金提供を行うことで一致した。しかしボルソナロ氏はツイッターで「マクロン氏がアマゾンに不当な攻撃を仕掛けることは許容できない。G7の有志というアイデアの後ろにはブラジルが植民地か、誰も住まない土地であるかのように扱おうとする彼の意図が隠されている」と不満をぶちまけた。

<参考記事>ブラジルのトランプがアマゾンを燃やす暴君に
<参考記事>「ブラジルのトランプ」極右候補が大統領に選ばれた理由

そろいもそろったり

それだけでは収まらなかった。ボルソナロ氏のフェイスブックのコメント欄に、支持者がマクロン夫妻とボルソナロ夫妻の写真を並べて投稿、2人のファーストレディを比べて「なぜマクロンがボルソナロを追及するのか分かる」とコメント。ボルソナロ氏は「彼に恥をかかせるな、ハハハ」と書き込んだ。

左派系の仏紙リベラシオンは「トランプ、ボルソナロとコメディアンたち」と題した記事を掲載。ボルソナロ氏を「グリーンランドを買いたい」と言い出したトランプ大統領と並べて、「超フェイクニュース、デタラメな政策を推進する政治指導者」と酷評した。

トランプ氏はツイッターにグリーンランドにトランプタワーを貼り付けたフェイク画像を投稿し「こんなことはしないと約束する」とジョークを飛ばした。デンマークのメッテ・フレデリクセン首相が買収提案を「馬鹿げている」と一蹴すると、「意地が悪い」とやり返し、予定されていたデンマーク公式訪問をキャンセルした。

グリーンランドは地球温暖化で厚さが最大で4キロもある氷床が急速に解け、天然資源開発に熱い視線が注がれている。中国もウラン開発に乗り出し、空港建設に参画しようとしたことから、グリーンランドにミサイル防衛のレーダー基地を持つ米国が安全保障上の懸念を強めていたことが買収話の背景にある。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国、米国に抗議 台湾への軍用品売却で

ワールド

バングラデシュ前首相に死刑判決、昨年のデモ鎮圧巡り

ワールド

ウクライナ、仏戦闘機100機購入へ 意向書署名とゼ

ビジネス

オランダ中銀総裁、リスクは均衡 ECB金融政策は適
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生まれた「全く異なる」2つの投資機会とは?
  • 3
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地「芦屋・六麓荘」でいま何が起こっているか
  • 4
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国…
  • 5
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 8
    レアアースを武器にした中国...実は米国への依存度が…
  • 9
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 10
    反ワクチンのカリスマを追放し、豊田真由子を抜擢...…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story