コラム

燃えるアマゾン、融けるグリーンランド 2人のデタラメ大統領が地球を破壊する

2019年08月27日(火)15時30分

しかしグリーンランドが温暖化対策に背を向けるトランプ氏に買収された暁には環境保護より利益優先の乱開発が進むのは必至だろう。石炭産業の保護を優先するトランプ氏はG7の気候変動・生物多様性セッションを当たり前のように欠席した。トランプ氏はハリケーンの米国上陸を防ぐため核兵器を海上で使えばいいと示唆したことがあるそうだ。

一方、アマゾン火災はNGO(非政府組織)の責任と根拠のない攻撃を続けるボルソナロ氏はジャーナリストから環境保護と食糧問題について質問され、「食べる量を減らして、一日置きに排便をすれば大丈夫さ。皆に良くなる」と平然と言ってのけた。国際社会の批判をかわすため、ブラジル政府は4万人の軍隊を出動させたと発表した。

左派系仏週刊誌ロブスはボルソナロ氏を「独裁制にノスタルジーを抱く元軍人」と評する。「アマゾンの森林保護はボルソナロ氏の優先事項ではない」と題した別の記事でボルソナロ氏が「NGOは僕をキャプテン・チェーンソーと呼ぶ」と発言し、農業の生産性を上げるため森林破壊を進めていることを伝えた。

ブラジル国立宇宙研究所(INPE)によると、ブラジルのアマゾン火災は今年に入って7万5000件を超え、前年同期比で85%も増えている。強引に森林を農牧用に転換すると、今世紀末までに火災の可能性が高い地域は70%以上、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の悲観的シナリオを組み合わせると最大で110%増加する恐れがある。

100万平方キロの森林が火災の危険にさらされ「アマゾンの森林を破壊し続けると、残りの森林が劣化し、環境の安定に影響を及ぼす」とINPEは指摘する。水力発電に力を入れ、農産品の輸出を確保すればブラジルは貿易収支の黒字を維持できる。

アマゾンの熱帯雨林を最大限に機能させることがブラジルと地球の未来につながるのだが、「熱帯のトランプ」ボルソナロ氏の耳には届いていないようだ。

20190903issue_cover200.jpg
※9月3日号(8月27日発売)は、「中国 電脳攻撃」特集。台湾、香港、チベット......。サイバー空間を思いのままに操り、各地で選挙干渉や情報操作を繰り返す中国。SNSを使った攻撃の手口とは? 次に狙われる標的はどこか? そして、急成長する中国の民間軍事会社とは?

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

再送仏政権崩壊の可能性、再び総選挙との声 IMF介

ビジネス

エヌビディア株、決算発表後に6%変動の見込み=オプ

ビジネス

ドイツとカナダ、重要鉱物で協力強化

ワールド

ドイツ、パレスチナ国家承認構想に参加せず=メルツ首
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 2
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 3
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」の正体...医師が回答した「人獣共通感染症」とは
  • 4
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 5
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 6
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 7
    顔面が「異様な突起」に覆われたリス...「触手の生え…
  • 8
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪…
  • 9
    アメリカの農地に「中国のソーラーパネルは要らない…
  • 10
    【写真特集】「世界最大の湖」カスピ海が縮んでいく…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 3
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 4
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 5
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 8
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 9
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 10
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story