コラム

「英国を丸裸にするEU離脱はもう止めて」ケンブリッジ大の女性博士が裸の訴え

2019年02月09日(土)21時23分

英国会議事堂の外でEU残留を訴える人々(2月7日) Henry Nicholls-REUTERS

[ロンドン発]3月末に期限が迫ってきた英国の欧州連合(EU)離脱。「ブレグジットは英国を丸裸にするだけ」と、残留を唱える英名門ケンブリッジ大学の経済学者ビクトリア・ベイトマンさんがチャーミングなボディーを惜しげもなくさらけ出して強硬離脱(ハードブレグジット)派に果たし状をたたきつけた。

1月中旬、ビクトリアさんは「拝啓、ダウニング街10番地(首相官邸の住所)にお暮らしのテリーザ・メイ首相。ここにプランB(EU離脱の代替策)があります。EU基本法(リスボン条約)50条に定められた交渉期限を延長して2回目の国民投票を実施して。これが大学街ケンブリッジに息づく生の署名よ」とツイートした。

ビクトリアさんは、2回目の国民投票を求める署名で埋め尽くされた美しい体の写真も一緒に投稿した。

離脱交渉はアイルランド・北アイルランド国境問題を巡り英・EU双方が譲らず、膠着状態が続いている。議会でも、ホワイトホール(官庁街)でも、大学でも果てしなき議論が延々と続く。過激なフェミニスト活動家としても有名なビクトリアさんは「男が力を使うなら、女がその体を使って何が悪い」という考えの持ち主。

「男性が屈強な肉体を酷使して兵士やボクサーになり稼ぐなら、女性が売春をして生計を立てるのも許される。経済学の中で売春もきちんとカウントされるべきだ」とビクトリアさんは主張してきた。

「女性の体は戦場」

残留派のビクトリアさんは2月上旬、英BBC放送の人気ラジオ番組「トゥデイ」に出演。放送中に突然、コートを脱いで丸裸になり、強硬離脱派の欧州研究グループ(ERG)の頭目ジェイコブ・リース=モグ保守党下院議員に「お互い裸になって討論しましょう」と呼びかけた。

「英国は今、住宅からNHS(国民医療サービス)まで非常に多くの問題に直面している。EUはこうした問題の原因ではない」「ブレグジットは王様の新しい洋服(愚か者には見えない布地と触れ込みだったが、実際は何にもなく、王様は裸だったという童話)。英国は決して実行されない約束に自らを売ってしまったのよ」とビクトリアさん。

男性司会者は「みんな服を着て討論している。どうして裸になる必要があるのか。他人の目を引くことをしたがっているだけでは」と質問した。ビクトリアさんは「女性の体は今、最大の戦場になっているのよ」と堂々と反論した。

EUから多くの留学生を受け入れ、研究資金を受け取っている大学関係者は基本的に残留派で、EUが抱える構造的な欠陥や排他性を全く議論しない。それに比べ、強硬離脱派の議論は「EUに加盟していることが未来永劫、英国の国益にかなっているのか」という根源問題を問いかけている。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏「ウクライナはモスクワ攻撃すべきでない」

ワールド

米、インドネシアに19%関税 米国製品は無関税=ト

ビジネス

米6月CPI、前年比+2.7%に加速 FRBは9月

ビジネス

アップル、レアアース磁石購入でMPマテリアルズと契
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パスタの食べ方」に批判殺到、SNSで動画が大炎上
  • 2
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長だけ追い求め「失われた数百年」到来か?
  • 3
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」だった...異臭の正体にネット衝撃
  • 4
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機…
  • 5
    「このお菓子、子どもに本当に大丈夫?」──食品添加…
  • 6
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中…
  • 7
    約3万人のオーディションで抜擢...ドラマ版『ハリー…
  • 8
    「オーバーツーリズムは存在しない」──星野リゾート…
  • 9
    「巨大なヘラジカ」が車と衝突し死亡、側溝に「遺さ…
  • 10
    歴史的転換?ドイツはもうイスラエルのジェノサイド…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 5
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 9
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story