コラム

再び世界を揺るがし始めたEU危機 イタリアは単一通貨ユーロ残留を選択するのか

2018年05月30日(水)16時00分

南欧諸国の国債を保有する銀行株も軒並み下落し、イタリア・リスクは東京や米国市場にまで波及した。

ソロス氏は、ドナルド・トランプ大統領のドル高政策が新興国から資金を吸い上げ、イラン核合意からの離脱、親イスラエル政策が中東の混乱をさらに深めて新たな金融危機を引き起こすかもしれないと警戒する。

イタリアでは豊かな北部を基盤とする同盟の支持率が急上昇している。ユーロ残留に疑いを差し挟む余地はないというマッタレッラ大統領の考えは正しいかもしれないが、ユーロがイタリアを南北に分断させ、低所得者層が多い南部のくびきになっている状況を忘れてはなるまい。

自由が加速する域内格差

世界金融危機が起き、その後、世界中で社会の分断が進んだことと、ベルリンの壁が崩壊して人と資本の移動が一気に自由化されたこととは実は密接に関係している。人・物・資本・サービスという4つの自由移動を掲げるEU域内では分断がさらに顕著に起きる。

生産性の低い地域の人や資本が生産性の高い地域に移動し、不均衡を拡大させる。それが金融危機の引き金となり、今度は金融危機後の低成長から抜け出すため、さらに人や資本の移し替えが激しくなる。生産性の低い地域は徹底的に切り捨てられるのだ。

優秀な若者がいなくなった地域は過疎化、高齢化によって保守化が進む。豊かな地域はより豊かになり、貧しい地域は徹底的に貧しくなる。リベラルな地域はよりリベラルになり、保守的な地域はさらに保守的になる。

こうした現象がベルリンの壁崩壊をきっかけに始まり、金融危機のあと一気に加速した。分断を和らげるには再分配機能を強化するしかないのだが、その反動として豊かな地域は独立を志向するようになる。それが英国のEU離脱やスペインのカタルーニャ独立問題、イタリアの同盟台頭の根底にある。

ソロス氏は、第二次大戦後、米国が欧州諸国のために行った復興援助計画「マーシャル・プラン」をアフリカ諸国に実施して難民の発生を抑えるよう提案しているが、実現する見通しは低い。

イタリアの五つ星運動や同盟の台頭がEUの強烈な危機バネとなって、最大の債権国であるドイツがユーロ圏共同債の発行に応じて債務国の負担を軽くしてやるしか、危機を根本的に解決する道はない。しかし、この究極の解決策も望み薄なのが悲しい現実だ。

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プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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