コラム

ドイツ、大連立へ 内部対立はらむ中道左派は終わるのか

2018年01月22日(月)15時45分

大連立協議が決裂して今、解散・総選挙になると、SPDは戦後史上最低の得票率をさらに更新する恐れが強い。ならば大連立の中でSPDの存在意義を示すしか生き残る道はない、というのがシュルツ党首の偽らざる胸中だろう。

大連立の合意文書は(1)2022年までに150万戸の住宅を建設(2)医療保険の労使分担(3)高所得者への増税見送り(4)EU改革の推進(5)難民受け入れや家族の呼び寄せを制限――が柱になっている。SPDの党内左派にとっては不満が強く残る内容だ。

成長か分配か

モノのインターネット(IoT)や人工知能(AI)、ビッグデータを利用した「インダストリー4.0」でメルケル首相はデジタル・エコノミーの成長戦略を描く。しかし効率化が進めば富と所得がさらに資産家、インテリ層に集中し、低賃金のサービス産業従事者が大量に生み出され、社会不満は一段と高まる。

「成長」優先の中道右派か、「分配」重視の中道左派か、という対立軸が今ほど求められている時代はない。SPDのフラストレーションはここに凝縮されている。にもかかわらず、EUというネオリベラリズム(新自由主義)の巨大マシーンに組み込まれた欧州では、統合推進か否かが唯一の政治的な対立軸になりつつある。

3度目の大連立が成就しても、すでにメルケル首相と大連立の終わりが始まっていると言わざるを得ない。


プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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