コラム

トランプがメルケルに冷たいワケ ギクシャクする米独関係

2017年03月21日(火)06時00分

ろくに目も合わさず、握手もしなかったメルケル(左)とトランプ(3月17日、ホワイトハウス)Jonathan Ernst-REUTERS

吹雪のため飛行機が飛べず、先延ばしされたアメリカのトランプ大統領とドイツのメルケル首相の首脳会談が17日、米ワシントンのホワイトハウスで行われた。写真撮影の時間、トランプはメルケルに視線も向けず、カメラマンやメルケルに促されても握手も交わさなかった。

大統領専用機エアフォースワンで移動、トランプナショナルゴルフクラブでプレー、別荘でのお泊りという破格の厚遇で迎えられ、日米同盟の固い結束を世界に示した安倍晋三首相との会談とは大違いだった。メルケルは困惑した表情を浮かべ、米独関係、引いては米・EU(欧州連合)関係がギクシャクしていることがうかがわせた。

トランプの主張は単純明快だ。安全保障のタダ乗りは許さない。アメリカの貿易赤字を解消し、国内に雇用を取り戻すという2点だ。

【参考記事】トランプ政権が貿易不均衡でドイツに宣戦布告、狙いはEU潰しか

共同記者会見で、トランプはこれまで「時代遅れ」と散々こき下ろしてきたNATO(北大西洋条約機構)に対して「私の強い支援をメルケル首相に伝えると同時に、加盟国に公平な国防費の負担を求めた。多くの国が長年にわたって多額の費用をアメリカに頼ってきた。とてもフェアとは言えない」と冷たく言い放った。

安保「タダ乗り」のドイツ

先のエントリーでも指摘したように国防費を国内総生産(GDP)比の2%に定めたNATO目標を達成しているのはアメリカを除くとギリシャ、ポーランド、イギリス、エストニアの4カ国。ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)データをもとに作成したグラフを見ると、ドイツの対GDP比の国防費がいかに少ないかが分かる。

kokubou.jpg

ドイツも日本と同様、第二次大戦の侵略国で、ナチスのユダヤ人大虐殺(ホロコースト)を起こしてしまった民族的トラウマから軽武装・経済外交の「平和主義」が染み付いている。しかし、ロシアのプーチン大統領の拡張主義が顕著になった今、ドイツは欧州経済のエンジンとしてだけでなく、安全保障における要の役割も求められている。

ドイツは「タダ乗り」と批判されても仕方ないほど、国防・安全保障には及び腰だった。メルケルは現在1.2%の対GDP比国防費を「2024年までに2%目標を達成する。昨年、ドイツは国防費を8%引き上げた」と約束した。トランプは過激派組織IS掃討作戦へのNATOのさらなる貢献を求めている。今後、ドイツの安全保障・外交プレゼンスが増すのは必至である。

【参考記事】ロシアがドイツに仕掛けるハイブリッド戦争

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

再送-米ミネソタ州での移民取り締まり、停止申し立て

ワールド

移民取り締まり抗議デモ、米連邦政府は原則不介入へ=

ビジネス

アングル:中国「二線都市」が高級ブランドの最前線に

ワールド

焦点:トランプ氏のミサイル防衛構想、1年経ても進展
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から脱却する道筋
  • 2
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 3
    関節が弱ると人生も鈍る...健康長寿は「自重筋トレ」から生まれる
  • 4
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 5
    「着てない妻」をSNSに...ベッカム長男の豪遊投稿に…
  • 6
    日本はすでに世界第4位の移民受け入れ国...実は開放…
  • 7
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 8
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 9
    日本経済を中国市場から切り離すべきなのか
  • 10
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 5
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 6
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 7
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 8
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 9
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 10
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story