コラム

日本における外国人労働者受け入れの現状と今後の課題

2020年01月09日(木)11時55分

政府が新しい在留資格、特定技能1号と2号を新設

政府は深刻な人手不足に対応するために、2019年4月に、改正出入国管理・難民認定法を施行し、特定技能1号と特定技能2号という新しい在留資格を新設した。改正法の特徴は、今までは許容しなった単純労働分野でも外国人労働者を正式に受け入れることが可能となったことである。特定技能1号と2号は、(1)求められる技能水準、(2)対象業種、(3)日本に滞在できる期間が異なる。その詳細は次のとおりである。

(1) 求められる技能水準

特定技能1号が、相当程度の知識又は経験を要する技能を要する業務に従事する外国人労働者に発給される在留資格であることに比べて、特定技能2号は、熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けに発給する在留資格である。原則として特定技能1号の修了者が試験に合格すると特定技能2号の資格取得が可能になる。

(2) 対象業種

特定技能1号の対象業種は、建設業、造船・舶用工業、自動車整備業、航空業、宿泊業、介護業、ビルクリーニング業、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業の14業種であることに比べて、特定技能2号の対象業種は、建設業と造船・舶用工業の2業種のみである。それぞれの業種についての分野別・運用方針については図表3を参照していただきたい。

(3) 日本に滞在できる期間

特定技能1号が通算5年までしか日本に滞在できない在留資格なのに対して、特定技能2号は日本滞在の期間に制限がない。したがって、建設業と造船・舶用工業の2業種以外の12業種で働いてきた外国人労働者は、特定技能1号が終了すると本国に帰国しなければならない。

特定技能1号と2号の在留資格を取得した外国人労働者の受け入れが可能な業種は、人材を確保することが困難な状況にあるため外国人により不足する人材の確保を図るべき業種に制限されているものの、受け入れ可能な業種は入管法ではなく、法務省令で定められるので、今後、深刻な人手不足が発生したことが認められれば、省令改正により他の業種にも広がっていく可能性がある。

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プロフィール

金 明中

1970年韓国仁川生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科前期・後期博士課程修了(博士、商学)。独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年からニッセイ基礎研究所。日本女子大学現代女性キャリア研究所客員研究員、日本女子大学人間社会学部・大学院人間社会研究科非常勤講師を兼任。専門分野は労働経済学、社会保障論、日・韓社会政策比較分析。近著に『韓国における社会政策のあり方』(旬報社)がある

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