コラム

「賃上げ」の実現はさらに遠く...サントリー新浪会長の辞任が、「経済政策に及ぼす影響」とは?

2025年09月25日(木)17時35分

「賃上げ実施できない経営者は身を引くべき」

ガバナンスという点では一つの区切りを迎えたわけだが、著名経済人で政財界への影響力が大きかったことを考えると、今回の辞任が今後、各方面にさまざまな影響を及ぼす可能性がある。

同氏は自身に対しても、また他人に対しても厳しい経営者として知られ、「賃上げを実施できない企業経営者は、即刻、身を引くべき」など、歯に衣着せぬ物言いで正論を主張してきた。


日本の財界は、村社会の様相が濃く、互いの傷をなめ合うようなカルチャーがあり、こうした前近代的感覚がガバナンス不全の原因であるとして海外投資家から批判の対象となってきた。新浪氏はジャニーズ問題やフジテレビのガバナンス問題が生じた際にも、率先して発言を行い、各社に対して強く改革を促してきた。

こうした新浪氏の発言力が買われ、政府の経済財政諮問会議の議員を務めるなど、政策にも強い影響力を行使してきたといえる。個人の資格で参画できる経済同友会については今後も職務を続けたいとしているが、大企業トップを辞任した以上、同氏の影響力が低下するのは間違いない。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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