コラム

習近平「独裁」で、中国経済「成長の時代」は終焉へ...経済より重視するものとは?

2022年11月02日(水)17時37分

毛沢東時代の中国は厳格な社会主義体制だったが、毛氏の死後、実権を握った鄧小平氏が改革開放路線を打ち出し、資本主義的な経済運営に舵を切った。鄧氏は「先に豊かになれる者から豊かになる」という先富論を提唱し、その結果、中国は目覚ましい成長を実現した。中国人の生活水準は一気に上昇したものの、今度は資本主義が行きすぎ、超富裕層と庶民の格差が拡大するという大きな問題を抱えている。

習氏の共同富裕論は、税や社会保障を通じて富を再配分するという趣旨であり、新政権は富裕層や企業に対する課税を強化する可能性が高い。こうした政策は、中国の経済成長を鈍化させる可能性があるものの、米中対立の結果、既に中国経済は大幅な失速を余儀なくされている。党内のほぼ全権力を掌握した習氏にとって、経済成長よりも、国内の統制を強めたほうが得策と判断した可能性は高い。

こうした方針は、中国との貿易に依存する日本にとっては大きな逆風となる。度重なる利上げによって米経済も失速が見込まれており、来年以降の日本経済は厳しい局面を迎えるかもしれない。

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プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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