コラム

コロナ対策で巨大イカ像を作り、20兆円は手付かず...これで経済が上向く?

2021年07月20日(火)20時50分
イカ(イメージ画像)

ozkanpsa-iStock

<コロナ関連予算のうち約3割がまだ使われないまま。「ふるさと創生事業」の頃から日本の財政出動は何も進歩していない>

新型コロナウイルス対策として政府が策定した関連予算のうち、約3割が支出されていない実態が明らかとなった。日本は昔から財政出動に無駄が多く、これが適切な成長を阻害してきた経緯がある。今回の使い残しも同じ文脈で捉える必要があるだろう。

政府は新型コロナウイルスに対処するため、3回にわたって補正予算を組み、総額で70兆円以上の金額を確保した。ところが実際に使われたのは50兆円程度しかなく、約20兆円の金額が使われずに残されているという。

国家の非常事態ともいえる今回のコロナ危機に際して、確保した予算の3割を余らせるというのはあってはならないことである。感染の初期段階から、コラムやテレビ番組などを通じて50兆円規模の国債増発が必要と繰り返し主張してきた筆者からすると、何のための国債増発なのかと問いたくなる。

だが冷静に見つめ直すと、日本は以前から財政出動に無駄が多いと指摘され続けており、今回、発生した予算の未執行も根本的には同じ問題と考えてよい。

日本は積極財政の部類に入る

日本経済は緊縮財政の影響で成長できなくなったとの指摘があるが、これは単なる印象論にすぎず、データはまったく逆の現実を示している。GDPに占める政府支出の割合は、1990年代までは先進諸外国と比較して低い水準にとどまっており、見方によっては緊縮財政と解釈することもできた。

ところが90年代以降、日本は政府支出の比率を急激に高めており、現在ではむしろ積極財政の部類に入る。そして90年代というのは日本の低成長が鮮明になった時期とぴったり一致している。

政府は落ち込んだ景気を回復させるため大型の財政出動を実施したものの効果がなく、低成長が続いてきたというのが実態である。つまり日本は緊縮財政によって不景気になったのではなく、積極財政に転じても景気を回復できなかったのだ。

このような状況になった理由のひとつとして考えられるのが予算の不適切な分配である。財政出動というのは成長に寄与する分野に重点的に資金を配分しなければ、適切な乗数効果(支出金額以上の効果が発揮されること)を得られない。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米ウェイモ、来年自動運転タクシーをラスベガスなど3

ビジネス

欧州の銀行、米ドル資金に対する依存度高まる=EBA

ワールド

トランプ氏、NY市長選でクオモ氏支持訴え マムダニ

ワールド

ウクライナ、武器輸出・共同生産拠点を独とデンマーク
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつかない現象を軍も警戒
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 10
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story