コラム

バイデンも、トランプと同じ保護貿易主義者? 自国優遇政策の狙いとは

2021年02月24日(水)12時15分

ところが、脱炭素シフトの必要性から、これを例外適用すべきとの議論が盛り上がっている。もしバイデン政権が国境炭素税を導入すれば、トランプ政権が実施した中国に対する高関税の対象や製品が替わるだけで、事実上、保護貿易が継続される可能性が高まってくる。

菅政権は2050年までの温暖化ガス排出量実質ゼロ宣言を行い、日本もようやく脱炭素シフトに舵を切り始めた。

だが日本の環境規制は欧州などと比較すると甘く、アメリカが本格的に脱炭素シフトを進めた場合、中国からの輸入品に加え、日本からの輸入品についても高関税が課される可能性が否定できない。政府調達における外国製品の採用比率も下がってしまえば、まさにダブルパンチである。

アメリカの保護主義的傾向は今に始まったことではなく、オバマ政権時代あたりからかなり顕著となっていた(オバマ元大統領自身は過度に保護主義にならないよう留意していた)。在日米軍や在韓米軍の撤退論もこの頃から本格化しているという現実を考え合わせると、これは長期的な動きであり、今だけの現象とは考えないほうがよい。

日本は米市場に製品を輸出することで経済を成り立たせてきたが、アメリカに対してはいつでも自由に輸出できるという感覚は改めたほうがよい。

<本誌2021年3月2日号掲載>

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プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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