コラム

セブンの米コンビニ「2兆円」買収という大勝負に、勝算はあるのか

2020年08月19日(水)09時25分

hapabapa/ISTOCK

<アメリカで3900店舗を持つ「スピードウェイ」の巨額買収の先に見据えるものとは?>

コンビニ最大手セブン-イレブンを運営するセブン&アイ・ホールディングスが、米コンビニチェーンの巨額買収を決断した。一部から買収金額の高さを指摘する声も出ているが、人口減少が見込まれる日本市場にこだわっていては、将来じり貧になるのは確実である。セブンは20年先を見据えた大きな勝負に出た。

セブン&アイ・ホールディングスは、米コンビニエンスストア第3位の「スピードウェイ」を2.2兆円で買収すると発表した。セブン-イレブンはもともとアメリカで展開していたコンビニチェーンで、セブン&アイの前身であるイトーヨーカ堂が日本の権利を取得して事業を展開してきた。その後、アメリカのセブン-イレブンをイトーヨーカ堂が買収したことから、現在では米国内の店舗も含めて、全てセブン&アイの傘下にある。

米国内のセブン-イレブンは約9000店舗あり、ここにスピードウェイの3900店舗が加わるので、最終的には約1万3000店舗となり、米国内でのシェアは1割に近づく。アメリカのコンビニ業界は市場メカニズムが徹底している国としては珍しく業界再編があまり進んでおらず、買収に乗り出すメリットは大きい。

セブン&アイは1.4兆円の現預金を保有するなど盤石な財務体質で知られており、同社の体力を考えれば、今回の買収は問題なく実施できるだろう。だが2.2兆円という金額は大きく、バランスシートの肥大化は避けられない。今回の買収を高成長につなげられなければ、他社並みの財務水準に転落してしまう。

国内は完全に飽和状態

これだけのリスクを背負ってまで同社がアメリカのコンビニ買収に乗り出した理由は、言うまでもなく国内市場への危機感である。コンビニは今や国内最大の小売店網だが、国内市場は完全に飽和状態となっている。

セブンは断トツの企業であり、そうであるが故に国内市場に頼っていては従来と同じ成長を維持することはできない。アメリカは人口増加が続く数少ない先進国の1つであり、成長を持続させるためには、米国市場の開拓は避けて通れない。

【関連記事】
・日本企業の海外M&Aが失敗しがちなのはなぜか
・日本経済が低迷する本当の理由は「中間搾取」と「下請け構造」

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ米大統領、自身のSNSに投稿された人種差別

ビジネス

アングル:インド「高級水」市場が急成長、富裕層にブ

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、リスク資産反発受け 円は衆

ワールド

トランプ氏、インドへの25%追加関税撤廃 ロ産石油
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予防のために、絶対にしてはいけないこととは?
  • 2
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入った「最強ライバル」の名前
  • 3
    韓国ダークツーリズムが変わる 日本統治時代から「南山」、そして「ヘル・コリア」ツアーへ
  • 4
    韓国映画『しあわせな選択』 ニューズウィーク日本…
  • 5
    【台湾侵攻は実質不可能に】中国軍粛清で習近平体制…
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 8
    日経平均5万4000円台でも東京ディズニー株は低迷...…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    「こんなのアリ?」飛行機のファーストクラスで「巨…
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から脱却する道筋
  • 3
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染拡大する可能性は? 感染症の専門家の見解
  • 4
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 5
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 6
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 7
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 8
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 9
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入っ…
  • 10
    エプスタインが政権中枢の情報をプーチンに流してい…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 8
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 9
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 10
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story