コラム

株価暴落「コロナ相場」の裏で起きている、もっと深刻な構造変化とは

2020年03月11日(水)12時06分

新型コロナの流行が終息しても、金融市場の危機的な状況は終わらない? AFSEZEN/ISTOCKPHOTO

<金融市場を襲った「新型コロナ」ショックが示唆するのは、たとえ感染が終息しても経済への悪影響は世界的に長く続くという暗いシナリオだ>

新型肺炎の感染拡大に対する懸念により、株式市場や為替市場には動揺が広がっている。本来であれば感染が終息すれば市場は元に戻るはずだが、今の市場は複雑な事情を抱えており、今回の下落が全世界的な景気後退の引き金になる可能性も否定できない。

これまで世界の市場は安定的に推移しており、中国での感染拡大はそれほど大きな影響を与えていなかった。だが日本を中心に、中国以外でも感染が急拡大する可能性が高まってきたことから、市場にも変化が生じている。

最初に反応したのは為替である。外国為替市場では今年2月18日以降、円を売ってドルを買う動きが顕著となり、1ドル=109円台で推移していたドル円相場は、20日には一時、1ドル=112円を突破した。その後、ドルの上昇は一服したが、112円台を付けたのは昨年4月以来、約10カ月ぶりのことである。ほぼ同じタイミングで金価格も急上昇しており、ニューヨークの金先物相場は一時、1オンス=1700ドルに迫る水準まで上昇した。

だが何といってもショックが大きかったのは24日と25日の米国株式市場だろう。ダウ平均株価は24日に1000ドル以上下落して取引を終え、翌25日はさらに879ドル下落。日経平均株価も大幅安となった。

続いて3月9日にもダウ平均株価は2000ドルと過去最大の下げ幅を記録し、急騰していたドルは一転して下落。一時は101円台を付けるなど急激な円高が進んでいる。

原因は新型コロナだけではない

一連の動きは新型肺炎の感染拡大を受けてのものだが、必ずしもそれだけが理由ではない。これまで米国経済は米中貿易戦争にもかかわらず好調であり、トランプ米大統領がFRB(連邦準備理事会)に対して低金利を強く要請してきたこともあり、株価の過度な上昇が続いてきた。

しかし、米国の好景気があまりにも長過ぎることから、市場では徐々に景気後退リスクが意識され始めており、一部の投資家は現金比率を引き上げていたところだった。このタイミングで産油国の減産交渉が決裂し、原油価格が暴落したことから、これが株価下落の引き金を引いてしまった。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日経平均は3日続伸、900円超高 ハイテク株に買い

ワールド

柏崎刈羽原発6・7号機、再稼働なら新潟県に4396

ビジネス

午後3時のドルは一時154.89円まで上昇、34年

ワールド

印インフレにリスク、極端な気象現象と地政学的緊張で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 6

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 7

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 8

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 9

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 10

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 10

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story