コラム

本気で考える、日本の労働生産性はなぜ万年ビリなのか?

2019年04月02日(火)15時25分

ponsulak-iStock

<日本の労働生産性は1970年代以来ずっと、先進国中最下位の座にある。付加価値が低く、労働集約的な日本のビジネス......なぜこのようなビジネスしかできないのか>

日本の労働生産性が先進諸外国と比較して著しく低いことは、すでに多くの人が認識しているだろう。だが日本の生産性の低さは今に始まったことではなく、40年以上も前から先進国では最下位という状況が続いている。日本人の賃金が上昇しないのも、働き方改革がうまくいかないのも、多くは生産性が低いことが原因であり、この部分を是正しない限り状況は改善しない。

日本企業は社員数が多く、労働時間が長い

日本生産性本部がまとめた2017年における日本の労働生産性(時間あたり)は47.5ドルで、主要先進国では最下位だった。1位の米国は72ドル、2位のドイツは69.8ドルなので、日本の生産性は米国やドイツの3分の2程度しかない。日本の労働生産性が先進国中最下位なのは1970年代からずっと変わっておらず、日本の生産性がよくなったことは一度もないというのが現実だ。

マクロ経済的には労働生産性と賃金には密接な関係があり、基本的に生産性が向上しないと賃金も上がらない。過去20年で日本の賃金は大幅に低下したが、生産性が伸びていない以上、賃金が上がらないのも当然である。生産性が高い国は労働時間が短くなる傾向が顕著なので、日本において長時間残業が横行しているのも、生産性の低さで説明がつく。つまり生産性が低いことは、労働者にとってあらゆる面でマイナスになると思ってよい。

では、どうすれば生産性を上げることができるのだろうか。その処方箋を考えるためには、生産性の定義をはっきりさせておく必要がある。

生産性を決める要素は、①付加価値、②労働者数、③労働時間の3つである。生産性は、①付加価値を労働投入量(②×③)で割って求められるので、生産性を上げるには、①付加価値を上げるか、②労働者数を減らすか、③労働時間を減らすのかの3つということになる。つまりたくさん稼ぐか、人を減らすか、労働時間を減らすしか生産性を上げる方法はない。

日本の生産性が他国と比べて低いということは、稼いでいないか、社員数が多すぎるか、時間をかけすぎているのかのいずれかということになる。たいていの場合、3つのすべてが該当しており、日本の場合も例外ではない。

例えば日本企業では、1万ドルを稼ぐために、平均すると29人の社員を動員し、7時間超の労働を行っている。ところが米国企業は、労働時間こそ日本と同じ7時間だが、社員数はわずか19人である。ドイツは25人と社員数は米国より多いが、労働時間は1時間以上も少なく6時間弱で済んでいる。つまり日本企業は、大人数で長時間労働しないと同じ金額を稼げていないということになる(図1)。

zu001.png

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

「台湾独立」勢力は断固取り締まるべき、中国共産党幹

ビジネス

訂正-東京外為市場・15時=ドル155円前半、米雇

ワールド

フィリピン、中国との間に協力の兆候 駐米大使「対話

ワールド

アングル:タイ与党に問われる改革実行力、選挙大勝で
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 2
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...周囲を気にしない「迷惑行為」が撮影される
  • 3
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 4
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 5
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 6
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 7
    変わる「JBIC」...2つの「欧州ファンド」で、日本の…
  • 8
    衆院選で吹き荒れた「サナエ旋風」を海外有識者たち…
  • 9
    「二度と見せるな」と大炎上...女性の「密着レギンス…
  • 10
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予防のために、絶対にしてはいけないこととは?
  • 4
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 5
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 8
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 9
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 10
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入っ…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 7
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 8
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 10
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story