コラム

ゼロから分かる安倍政権の統計不正問題

2019年03月06日(水)17時30分

どちらのケースも許されることではないが、従事者による「手抜き」を100%防ぐことはできない。統計学的な信頼性という観点からすれば、想定された範囲内のトラブルとみてよいだろう。

日本の国家統計は貧弱

では、深刻な統計不正は毎月勤労統計だけなのかというと必ずしもそうとは言い切れない。実はあらゆる統計の集大成ともいえるGDPの正確性についても疑問視する声が少なからず上がっている。日本銀行は非公式ながらもGDPの算出方法について疑義があるとするペーパーを公表したし、一部の専門家はGDPの数字が上向くように修正されていると批判している。

GDPは最もマクロ的な統計なので、それ自体にある程度の曖昧さがあり、現時点において日本のGDP推計に問題があると断言することはできない。だが、先進諸外国と比較して、GDPを中心とした日本の国家統計が貧弱であり、改善の余地が大きいことは紛れもない事実となっている。

統計というのは近代民主国家における礎であり、これが信用できなくなったら民主国家としては終わりである。

国家が持つ対外的パワーというのは、経済力や軍事力などハード面だけにとどまるものではなく、統計の信頼性や情報公開などソフト面の影響が極めて大きい。こうしたソフト面でのレベルの違いが国際交渉力に大きく関係していることを、私たちはもっと認識すべきである。

<2019年3月12日号掲載>

※3月12日号(3月5日発売)は「韓国ファクトチェック」特集。文政権は反日で支持率を上げている/韓国は日本経済に依存している/韓国軍は弱い/リベラル政権が終われば反日も終わる/韓国人は日本が嫌い......。日韓関係悪化に伴い議論が噴出しているが、日本人の韓国認識は実は間違いだらけ。事態の打開には、データに基づいた「ファクトチェック」がまずは必要だ――。木村 幹・神戸大学大学院国際協力研究科教授が寄稿。

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プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネスなどの分野で執筆活動を行うほか、テレビやラジオで解説者やコメンテーターを務める。『お金持ちの教科書』(CCCメディアハウス)、『スタグフレーション』(祥伝社新書)、『本気で考えよう! 自分、家族、そして日本の将来』 (幻冬舎新書)など著書多数。

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