コラム

人口減少の日本が取り入れたい、デンマーク式「財団企業」の賢い経営

2025年06月14日(土)14時00分

ビールメーカーのカールスバーグも「財団企業」の1つ CARSTEN SNEJBJERGーBLOOMBERG/GETTY IMAGES

<非営利の「産業財団」が企業の多数株を保有するデンマーク式経営で、長期的な戦略を優先できるし敵対買収も防げる>

日本では、出生数が年間70万人を割ったと騒いでいる。昔、筆者は3年間の留学から戻って、東京の毎朝ぎゅうぎゅう詰めの通勤電車に閉口。「なんでこんなに人が多いのだろう。皆が暮らしていくために、たくさんの人が同じことをやって、受け取るお金を減らしている。人が減れば電車もすき、給料も上がるだろうに」とひそかに思ったものだ。

ところが日本ではなぜか、人口の大きさが国の格、そして経済力を決めると思い込んでいるから、人口減の報道で自信喪失してしまう。世界、特にヨーロッパでは、人口が少なめでも快適で豊かな生活をエンジョイしている国は多いのに。


例えば「北欧の老舗」デンマーク。ここは人口が約600万。人口では西欧の大国ドイツの約7%、フランスの8%しかないが、GDPでは9%、13%に相当。つまり人口1人当たりのGDPではドイツ、フランスをしのいで世界最上位クラスにいる。

さぞかしブラックな働き方をしているのだろうと思うとあにはからんや、『デンマーク人はなぜ4時に帰っても成果を出せるのか』という本が日本で売れるほど、生活はゆったりとして、さまざまな幸福度指数でいつも世界トップクラス。ははぁ、要するに高望みをしないから幸せなのかと見くびるなかれ。この国は、政府のデジタル化でもトップクラスで、合理化の極み。会議とか根回しに時間を使わず、生産性が高い。

プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米6月卸売物価指数、前月比横ばい 関税をサービス下

ワールド

グリアUSTR代表、貿易赤字削減と再工業化の必要性

ワールド

米20州、トランプ政権を提訴 自然災害対策補助金打

ワールド

ケネディ米厚生長官、主席補佐官ら2人を解雇
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 2
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏にも送電開始「驚きの発電法」とは?
  • 3
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長だけ追い求め「失われた数百年」到来か?
  • 4
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 5
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 6
    「巨大なヘラジカ」が車と衝突し死亡、側溝に「遺さ…
  • 7
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 8
    約3万人のオーディションで抜擢...ドラマ版『ハリー…
  • 9
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 10
    「死ぬほど怖かった...」高齢母の「大きな叫び声」を…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 5
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 6
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 7
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 8
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 9
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 10
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 7
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 8
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 9
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story