コラム

人口減少の日本が取り入れたい、デンマーク式「財団企業」の賢い経営

2025年06月14日(土)14時00分

デンマークは高福祉、高負担の国だ。所得税は55%に及び、消費税も25%なのだが、大学まで学費は無料だし、転職の際には失業保険が2年も支給されるなど、現役世代への手当てが十分なので文句が出にくい。

利益と公益のバランスを取る経営

日本の人口が1億人に減っても、デンマーク並みに1人当たり7万2000ドルのGDPを稼ぎ出せば、国のGDPは7兆2000億ドル(2024年は4兆ドル)になる。電車通勤は楽になるし、言うことあるまい。


そのデンマークには、企業の形態で参考になるものがある。1つはこの国で特に多い「産業財団」方式。これは、普通の企業の組織の上に「財団」を乗せる。この財団は企業の多数株を保有しているが非営利団体で、公益を目的に掲げる。その長は保有企業のCEOが兼ねることもあり、保有企業の長期戦略を定める。

企業は上場されていて他の投資を受けるが、多数株は財団が保有しているから敵対買収はされない。そしてその配当が、財団の収入となり、その収入をR&D(研究開発)や環境問題などの社会事業に活用したり、慈善目的に寄付すると、その分は税が控除される。

このやり方は1984年の「商業基盤法」で法制化され、今ではこの方式の企業の株価総額が、全体の半分以上を占めるに至っている。株価総額で世界29位の製薬大手ノボ・ノルディスク 、ビール大手のカールスバーグ、海運大手APモラー・マースクも多数株を外部の財団が保有する。

プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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